「七北田橋」構造

2022年06月05日

枯れた白菜がぽっぽんと
ほったらかされて

腐っちゃいるんだけど
凍っているから
かろうじてぽかぽかで
わずかにとけだして
匂うかおりに
顔をしかめながら

僕はこまかくあじけない土を
手につけながら
はいずりまわっている

つまり
僕は学校にカゼで休むと
電話をして
だけどゲームセンターへ
行く金もないから
不法耕作されている
川岸の畑で

こっそり用意してた私服に着替えて
ぼくはゆっくり、びちょ濡れになった
エロ本をあさっていたんだ

つめたく
しもがはった
汚いデッサンの女の裸を
ながめながら
僕は興奮するまえに
あきれて川面をながめていると

コンクリで固められた川岸を
スプレーで塗ったくられた
盗難自転車で
つっぱしっている
やつを僕は向こう岸に
みつけた

ああ、あいつだ
この町に
かえってきた
あいつ

あそこにいるのは
さかのぼること三年
小5んときに
お袋が富士なんとかいう
新興宗教にはまちまって
挙句の果てにチンカスを
舐め取ってもらっているとか
わけのわからない
噂をたてられ

登校拒否になって
たぶんじいさんばあさんの家にあずけられて
どこかにいってた
山田K太郎は

12歳になって
この町に帰ってきた
そしてまたお袋と一緒に
くらしはじめて
隣町の中学校に通って
そして染めムラのある
金髪になって

多分シンナーをやりながら
ぼくの知らない
だけどきっとみんなが
必死でよりどころにするだろう
バンドの曲を口ずさんで

ばかあほきちがいのように
自転車をバイクのように操って
コンクリートの川岸を
ぽかぽかしながら
走っているんだ