「水無月」馬野ミキ

2022年06月05日

主観ですけど個人的に
恋人の手足を縛って
でかい尻叩いてたんですよ
ハイウエストからペンシル、マーメイド
流線型って美しいじゃないですか?
じゃないですか?
保険体育の授業で女性は丸みを帯び、ってのがよく分からなかったですね 当時
もっと丸くなるのかと思った
惑星みたいに

骨盤や
密林が閉じこめられ
その運動により
伸び縮みする
ウレタン、ポレエチリン、絹、綿
サテンは
特に視覚を通して脳にくるぼくの好物で
野生が
布きれのなかでここは狭いとタイトドレスのなかで
ビジネススーツのなかで
横に皺を作り
荒野を歩きたいじゆうを望む二本の脚と
破壊したい繊維の分子を
それが芸術の叫びみたいでたまんないって
恋人の手足を縛って
100均の巻き尺で測ったら97cmだったでか尻を叩いてたら
変な人が来て
それはDVですと言う
女性蔑視であると
或いは差別だと
私が望む正義ではないと
拡散しますよと

この変な人は
おれの女の なにをわかってるんだろう?
きっとおれの女を抱いたことがないんだ

確かに俺たちは毎日ニュースをみないで唾液を交換していた
映画をつけても終わりまで見ない
どこかとおい国ではじまった戦争が終わらないのだということは噂には聞いてた
流行からとり残れていることはとうに知っている
俺たちは平和への募金をしないし、そのようにベッドにいた
煙草を吸い
珈琲を飲み
歯を磨き
ただ「する」のだ
ベッド下のばねは俺たちを支えたし
一瞬だけ引力から跳ねてふたりで笑ったりしたし
稀に俺が縛られることもあった
そう 俺たちは 正しくない
或いは、
特に俺は、まったく正しくないのだー 









馬野ミキ