「16歳/依存」ヒラノ

2022年09月22日

久々に会った。もう10年は経っていた。その人と僕はミスタードーナツの葛西店の先輩と後輩、17歳と16歳の女の子だった二人を渋谷の夜、ナンパした。

僕は17歳だった子と付き合う事になった。ひどい事をした。ごめんね?
ありがとう、ごめんなさい。

誠志郎、せいしろうサン
彼は当時28歳で16歳のなっちゃんの後輩と付き合うようになったそうだ。俺はそこまでしか知らない。

それから十数年経って、21歳だった俺が30歳を過ぎ、誠志郎さんに会った。

「お久しぶりですね!」
「おう!」



「で、ですね、あの時の子、いたじゃないですか?」
「あの子とどうなったんですか?」
「あっ!あれ?、3回子供堕ろして、そんで3回目の後、あいつの母ちゃんが包丁持って来たから...」
「包丁っ?3回っ?えっ?そんで?...」
「ボコボコにしたよ」
「ボコボコに?お母さんを?」
「あっ?テメェ!なんて目をしてんだよ?相手は刃物持ってるんだぞ?!やるに決まってるだろ?テメェも殺すぞ?」

軽蔑の目を向けた時、

僕は胸ぐらを掴まれ、暗い店の隅まで押し込まれた。先輩達は談笑に夢中で俺の事なんて見えていない。



下校時、白のマスタングのオープンカー、イケメン、
超オトナの彼氏

私立嘉悦女子校の前に停車するそれ。

「おう!乗れよ?!」
それは名物となった。

飯田橋の女子校の前に停車する白いマスタングV8プレミアム
颯爽とドアを開け、後部座席に鞄を投げ、助手席に乗る一年生
ニ年生、三年生を飛び越え、その視線を一身に集め、
とびっきりの優越感を音にした、「私ってすごくない?!」を聴覚化した、校門そばから撒き散らし響かせるエンジン音
「ブルブルブルブル」

まだ皆なが、先輩だって知らない秘密の時間
アブない、ヤバい、すっごい、
すっごい、すごい...



何回も繰り返した
何回もエッチな事をした
AVよりも凄い事をした

内緒だけど...

子供が出来た
産婦人科に行った

友達には言ってない
言えない...
誰に相談したらいいの?
「ねぇ、せいくん?」

子供が出来た
産婦人科に行った、二回目

お母さんには言ってない
言えない...
誰に相談したらいいの?
「ねぇ、せいくん?」

「コンドーム着けてね?」
「なんでだよ?お前、ナマ好きだろ?」
「イクっ!イク!イク!イク!」
「あぁ!、俺もっ!イキそう!出すぞ!」

子供が出来た
産婦人科に行った、三回目

誰にも言ってない
言えない...
誰に相談したらいいの?
「ねぇ、せいくん?」

「コンドーム着けてね?」
「お前って本当にコレ好きだよな?!」
「すごい... 気持ちイっぃぃぃイイ...」

ねぇ?私、もう赤ちゃん産めないよ?せいくんの部屋でふるえる私
「はぁ?」
「ねえ、せいくん?」
ブルブルブルブル

「ピンポーン」
お母さんが居た
包丁を持って
ブルブルブルブル

「私の娘を返してよ!」
「私の娘を返してよ!」
「私の娘を返してよ!」

振り下ろされる右手
力一杯、めいっぱい、何回も何回も

アパートの階段の踊り場に転がっている血まみれの母親

歯が折れ、鼻が折れ、視界が暗くなり、腫れ上がった顔
タクシーにすがり、血塗れのまま「なんでもありません」と一緒に告げた自宅の住所、江戸川区西葛西

もう、戻れない。



駅前、パンフレットを差し出される
「神様について考えた事はありますか?」
誰にも相手にされない一日

孤独
ゆっくりと廻る毒

「すみません、今日も誰にもパンフレットを貰っていただけなくって...」
「大丈夫ですよ!あなたが人一倍、誰よりも頑張ってる事、神様には届いていますから!この調子で明日も、頑張っていきましょうね!」

こぼれる笑顔、そう、わかってもらえる、理解してもらえているという安心感、脈打ち駆け回る安心感
そう、この感じ...



そして今日も駅前に佇む、孤独

孤毒

泣いた、寝た、そしたらなんでもなかった
泣いた、寝た、そしたらなんでもなかった
泣いた、寝た、そしたらなんでもなかった

安心感と孤独、安心感と孤独、
安心感と孤独、安心感と孤独
聴こえてくるエンジン音

震える手で、脳に、心に、あそこに、挿さる注射の針
「アあああああぁー!」

痛い、気持ち良い、痛い、気持ち良い、この繰り返し
もっと!もっと!もっと!
「寂しいの!」
「足りないの!」
「誰もいないの!」



「ねぇ?」


ただ、泣きながら、我慢している
私、震えている

「これって、誰のせい?」

もう居場所がない、逃げられない、ベッドの隅
友達にも言えず、親にも言えず

誰にも言えず...
言えず...
言えず...
言えず...

え?イエス?
お前って本当に好きモノだよなぁ!

そんな二人にもこんな時間があったと思われる


「いつも、そこにある...」