「岩楯」ヒラノ

2023年09月19日
中高の同級生に岩楯という奴がいた
これが癇癪持ちで変人
会話の間が特殊かつ言っている事もデタラメで、かろうじて会話が通じるレベル、なのでクラスメイトにイジられまくっていた


俺達は男子校だったのだが男子校は意外と女子校との交流が多く、互いの元同級生の女子校に進学した子と頻発に連絡を取り合い、お互いの学祭ともなればそれはもう一大イベントで出会いの場、週末ともなればあちこちで男女複数名で集まりカラオケでコンパをしていた

だが、人数合わせであっても岩楯が呼ばれているのは一度も聞いた事が無い

そうして高校3年間が終わり岩楯は日本大学に進学した

そこでウソの様な本当が起こる
その校舎の1年生でトップクラスのとても可愛い女の子と付き合う事になる
その子を仮に「A子」としよう

A子は男子から絶大な人気があり付き合いたい、告白したいという者は多数いた

岩楯は多くの嫉妬を買った
だが変人の岩楯だ、気にもしない、というか気づいてすらいなかったのかもしれない

以後、工作員とも呼べるA子のファンの複数の男子が「岩楯とA子を別れさせる作戦」開始した

実は…
なんと岩楯はDV野郎だった
そのマドンナであるA子に事あるごとに暴力を振るっていた
おそらくA子の女の子の友人に相談した事がA子ファンの男子生徒に漏れたのだろう
「岩楯、お前A子に謝れよ」何度も何人にも言われたが岩楯は頑なに謝らなかった

この事実が露呈してから工作員たちの活動は怖ろしいほど活発になった
工作員たちは入れ代わり立ち代わり「岩楯みたいなクソ野郎なんかと別れちゃいなよ」とA子に囁き続けた

そして、ついにA子も立ち上がった
A子は岩楯を学食に呼び出した

嫉妬に狂う工作員とその野次馬
多くのオーディエンスが学食に集まり「あのムカつくDV岩楯がついにフラれる!」と、お祭り状態になった

運命の時

A子「岩楯君、私と別れて欲しいんだけど…」

岩楯「なんで?ダメだよ」

オーディエンスはヒートアップする
皆、ニヤニヤが止まらい「ついに来るぞぉ!」

A子「そしたら、これからはセックスフレンドという事でお願いします」

岩楯「じゃあ、そういう事で」

「はい?」オーディエンスは皆口を開け凍りついた

そんな話ってある?何それ
動揺を隠せないオーディエンス一同

本当の様なウソ、それはただのウソでしかないので無視するべきだが
重要なのはウソの様な本当である
これを見抜くのは難しく、見誤れば場合によっては危険な思いをする

この時代、恐ろしいほど情報が飛び交っている
取捨選択、何を選択するか?しかし人間は自分好みの、心地の良い情報を選択する傾向がある
芸能事務所だ学者だ医者だ選挙だとか一体、何が正しいのだろうかと考えた事はありますか?

A子はエッチな事が大好きで容姿も優れたAV女優の様な女性だったのか?おそらく現場に居た野次馬はその様にあちこちに言いふらした事だろう
俺も当時、そう思った

大人になった俺の見解はまったく違う
もしもA子は岩楯の暴力を怖れ、別れた後の報復を予見していたとしたら?そういう意味での保険をかけていたとしたら?
岩楯の心は受け付けるつもりは無いが、体を許す事で暴力から逃げられるのならば

しかし日本大学というマンモス校である、口コミで男子生徒を主として爆発的にその話は広がるだろう事は簡単に予想出来る
噂じゃない、目撃者は複数いる
女子生徒もそういう目でA子を見るだろう
「A子って超ビッチなんだってw」

その後のA子の学生生活は最悪だったろう
様々な男が下心丸出しでアプローチしててきたはずだ

岩楯に怯え、校舎で怯え、どうやって自我を保っていたのか

その後の2人はどんな人生を歩んだのか?

いや、待てよ?岩楯みたいな変人と寝るような女の子だ
案外A子も変人だった可能性もある
おおよそ岩楯のコミュニケーション能力で口説けるわけがない

本当の様なウソ
ウソの様な本当

どっちだ? 





ヒラノ