「タラチネ」三明十種
連日の深酒デ
醜惡に成り果てた私は
亭主の居ない時間を見計らつて
私に好意を抱いてゐたと思われる
女の住む一軒家を訪レた事があつた
其の玄関先でちらと見た赤子は
鯉のやうな口から乳臭ひ泡を噴いてゐて
少々意地悪な心持になつたり
・・・
赤子に乳をやる女の気配を
まだ真新しい襖越しに感じつつ
右脇腹を畳に押し付けるやうにして
乳児用のタオルケツトを枕にし
さふしてても肝臓の疼痛は治まらず
脂汗や慾求は止むことはなく
寧ろ持続的に波打ツ
鐵道三本も乗り継いできたのにだ
ぶつとい乳首から絞り出ス乳滴
ぽたりぽたりと板の間に
日本酒一合ほど恵んで貰ふ
その女に約十年分の日記を託して
わたしは帰つた


