はじめての文フリで「はじめてのフェリー旅」を買う■文学フリマ大阪11へ 安孫子正浩

2023年09月15日

9月10日(日)文学フリマ大阪11へ。
会場は天満橋OMMビル。ブースの出店は720、一般来場は3135人。 

文学フリマは初参加。
訪れるとやはり寺西幹仁さんが始めた「詩マーケット」を思い出す。20数年前だが、当時まだ大阪にいらした寺西さんが、「詩の同人誌ってたくさんあるんですよ。それをコミケのように集めてイベントをする。それを求めている人はたくさんいるはずだ」と熱く語られていたのだった。以降、同時多発的にそれに類した同人誌のイベントが名前を変え、場所を変えしつつもあちらこちらで開かれるようになったことでも寺西さんに先見の明があったことは間違いない。そして彼には勇気もあった。求めている人が多くいたとしても、最初にリスクを越える勇気をもってやれたのは寺西さんだった。いまでも詩の同人誌を集めて開かれるイベントはあるが、僕にしてみれば(多少の偏見と思い入れを込めて)どれも「詩マケ」のエピゴーネンである。
回を重ねるごとに参加者も増え、全国から来られるようにもなった(その当時は文学系同人誌を扱うイベントは「詩マケ」しかなかったのだから)頃、寺西さんは「詩マケをやめます」とおっしゃった。彼の見据えていた未来は「ちゃんと同人誌が売買され、詩を書いている人が生計をそれで立てられるようになること」であり、「詩人の周辺以外の、市井の人にも詩が届くようになること」だったと僕は感じていたのだが、前者については、詩マケ会場に「売れなくてもいいので交換してください」「自分の作品に金額をつけたくない。詩は"人生"(生き様だったかな?)でお金に換算するものではない」という人が少なからず現れたことで、後者は、結局どれだけ規模が大きくなっても内輪感の方が増し、少しも外側に届いて行かなかったこと、…があるのではないかと僭越ながら思っている。詩を書く人以外にもそれらが届くようにと、休日の万博公園でオープンな野外でも実施したのに、…。寺西さんは、「詩マケ」を終わらせ、次の手を打たねばならなくなった。 

当時、詩については門外漢だった僕とOくんとに「手伝ってください」と声が掛けられたのは、詩壇(そんなもんがあるかどうかさえ知らない。便宜上、そう呼ぶけど)と無縁の僕らは忖度なく現場でノーをいうことができた。臨機応変に、適切で適当な判断を寺西さんに相談なく下せる見様によっては傍若無人なふるまいが、なぜかその当時できていたことに因る(と思っている)。遊撃隊のようなもので、トラブルが起こってもテキトーに解消する役を担っていたのだと思う。それだけ信頼されていたのだとすれば大変に名誉なことだ。 

そして「詩マケ」は終わり、いくつもの似たイベントは周辺で残り、僕も立派な会社員になって20年近くそういった場から離れた。文学フリマについては当時、確か始まり、名前を聴くようになっていた。僕もかなりの気合と愛情をもって小説の同人誌をやっていたが、事情があって遠ざかることとなった。

そして、今回初めての文学フリマ参戦(…。)。先に書いたように大変な賑わいで、時代の変化もあって多様な趣味がちゃんとその場でてらいなく存在できるようになっていたのは、本当におもしろいと思う。文学のジャンルでいえば、ファンタジーが圧倒的に多いが、なぜああも似たタームを誰もかれも用いるのだろう。「黒」とか「薔薇」とか「騎士団」とか。もっと違う色に花を用いてファンタジーを書けば差異かも図れるのになぁ、と思わなくもない。それか離れすぎて時代モノにいってしまっているかで、既成のイメージを借り過ぎているのはちょっと残念。そのほかの小説群が、ライトノベルという括りになっているのも、まあ成熟の証なのかな。そして当時からある純文学の名だたる同人誌もいくつか参加していて、「お、あの人まだご存命か。よかった」と付されている同人一覧を見て思う。

結局、自分が購入したのは次の二冊。「はじめてのフェリー旅2023」 (発行:かんたんのゆめ)「団地ブック 0・1合併号」(発行:チーム4.5畳)

こういう趣味が高じたノンフィクション(?)の方が圧倒的におもしろいと思います。「はじめてのフェリー旅2023」は毎日読んでへらへら笑いながら、次の旅を夢見てます。







安孫子正浩 

※安孫子正浩さんのFacebookより引用させてもらっています。Facebook