「秋月祐一とけんごの短歌ワークショップ 〜はじめての短歌〜 第二回」秋月祐一

2023年02月15日

けんごさん、こんにちは。秋月祐一です。

短歌にご興味をもってくださり、ありがとうございます。

以前、この「抒情詩の惑星」で、
前編集長の馬野ミキさんと短歌のワークショップをさせていただき、
今回、ミキさんのバンドでベースを弾いているけんごさんとも
短歌のワークショップを行えること、不思議なご縁だと思っています。

短歌(百韻連歌)の印象を、雪の日の朝に例えてくださっているの、
とても素敵だな、と思いました。

雪が降っただけで、世界がちょっとだけ変わって見える。
その「ちょっとだけ変わる」というのが、まさしく短歌の世界です。

短歌は一首、二首と数えますが、
一首の短歌を読んだだけで、世界がちょっと変わって見える。
ぼくは、これって、すごく楽しいことだと考えていて、
その感じを共有してくださっていること、とてもうれしく思います。

さて、けんごさんが初めて書いた短歌を読ませていただいて、
その推敲を一緒にしてゆきたいと思います。

【原作1】

 覗き穴の向こうの雨粒を
 扉を開けて見ることもなく/けんご

歌人の林あまりさんのように、
短歌を2行書きにされる方もいらっしゃいますが、
とくべつなこだわりがない場合、1行書きにするのが一般的です。
なので、1行書きにすると、こうなります。

 覗き穴の向こうの雨粒を扉を開けて見ることもなく

ドアの内側にいながら、見えない雨を感じている、
という素朴な内容の歌ですね。

短歌のかたち(これを定型と呼びます)は、
5・7・5・7・7です。

けんごさんの歌の音数を数えてみると、
 覗き穴の/向こうの/雨粒を/扉を開けて/見ることもなく  
  6    4    5   7      7

というかたちになっています。

短歌の5・7・5を上の句(かみのく)、
7・7を下の句(しものく)と呼びますが、
この歌の場合、下の句は7・7の定型になっていますが、
上の句は6・4・5のイレギュラーなかたちになっていますね。
これをどう整えて、5・7・5の定型に寄せていくかが、
推敲の第一歩になります。

まず「覗き穴の」。
これを「覗き穴」とすれば5音になりますが、
つながり的には「の」があった方が自然ですよね。
だから、ここはそのままにします。
これを「字余り」と言います。

 覗き穴の/向こうの/雨粒を/扉を開けて/見ることもなく

次に「向こうの」。
ここは7音のはずが4音しかありません。
これを「字足らず」と言います。

これをどうしましょうか?
試しに次の「雨粒」までをここに入れて、
「向こうの雨粒」としてみましょうか。
向こうの雨粒、8音です。
これも字余りですが、許容範囲です。

 覗き穴の/向こうの雨粒/(5音)/扉を開けて/見ることもなく

そして空いてしまった5音のところに、
どんな言葉を入れるか?

すっと思いつくのは、①感じてる、②聴いている、あたりでしょうか。

【改作案1】
 覗き穴の/向こうの雨粒/感じてる/扉を開けて/見ることもなく

【改作案2】
 覗き穴の/向こうの雨粒/聴いている/扉を開けて/見ることもなく 

「聴いている」だったら、その前の「雨粒」が「雨音」のほうが、
しっくりくるかもしれませんね。

 覗き穴の/向こうの雨音/聴いている/扉を開けて/見ることもなく

けんごさんの感性では、どちらがしっくりくるでしょうか?
「聴いている」「感じてる」以外の、
5音の言葉を入れていただいても構いません。

ご検討のほど、よろしくお願いいたします。