「おおかみなんてこわくない」鷲井せつこ
スリランカで涙を売って商売をしていたという男から
ハッピーアワーで320円のレモンサワーを奢ってもらい
お通しにでてきたキツネのコブ締めをつついて一杯やった
男からは燻した革製品の匂いがして
嗅いだ瞬間、叔母の家の洋服棚を思い出したので
こころの中で勝手にオバ・チャンチという名前をつけて昼過ぎの暗い居酒屋を共にした
オバ・チャンチはニコニコしながら居酒屋の店員と国籍不明の言葉で会話し
下ネタか質の悪い冗談でもいっているのか、アジア系の女店員は笑いながらチャンチを叩くふりをした
「涙は日本では吐いて捨てるほどあるが、スリランカでは貴重なのだ」
チャンチは瞬きもせず、カピカピに乾いた絵の具のような目でそう言った
「つばとか、血や精液なんかの動物のジュースを信仰するグループがあり、若者を中心として今人気がある
...