「失恋」ヒラノ

2024年04月01日

そうよ
お話ししましょうか?聞いていただけますか?

始まりは一通のダイレクトメール
「これヤバいやつだ、行って助けないと…」

ちょっと良くないイメージが沸いて来た

けっこうマズい状況かと思い、防弾チョッキを纏い、FN F2000を口に隠し、約束した某所公園へ

「こんばんは!」

なんだ、大丈夫そうじゃん?
本人も言ってる、「ビックリさせちゃった?」

するわ、普通にビックリするわ
でも、無事で良かった

いっぱいお話しした
俺は人の目を見て話すタイプの人間で、その人は前髪が多かった

右手で、左手で、前髪をどかした

目が見たかった

おっそろしいぐらい綺麗だった
全てを吸い尽くすぐらい
綺麗な目、だったんです

よく「胸がキュンキュンする!」って言うでしょ?
違うよ、「バキューン!バキューン!」って明らかに発砲音なの

死んだよ、二発も喰らってるんだもん、それも頭にな

即死だろ

頭蓋骨から脳髄がはみ出てる
ま、魅力的な人の前じゃ関係無いけどね


が、

その人には無数の切り傷があり、完治もしていない

ゆっくり、ちょぴりとずつ、話してくれるのだが、どれも強烈で、痛い話だった

傷を負ってた、深いやつだ

そしてバカな俺はその傷口に指を差し込んだ

その人は歯を食いしばって途中まで我慢していたのだろう

ここで言う傷とは外科的な意味では無い

結果?結果…
嫌われた、嫌われたじゃ済まないぐらい嫌われた

すげぇぜ?!
「ガッツン!ガッツン!ガッツンガッツン!ガッツン!!!!」
あっという間にコンクリートの城壁が立ち上がり、フェンスがそれを取り囲み、鉄条網が設置され、衛兵まで出て来た

さっきまでその人は膝を抱えて泣いていた

気づけば、そこは深くて暗い森の底だった

俺の今日の装備は?

「これじゃあ撤退しかない」

泣きながら帰った日曜の晩
自宅で泣きながら口からFN F2000を吐き出した

翌の月曜、同い歳の田辺さんに電話した

「おー、ヒラピー!元気?」
元気じゃねーから電話してんのよ…

「あのね、田辺さん聞いて?俺ね、昨日、すっごいフラれかたしたの…」

「良かったじゃん!ヒラピー好きな人出来たんだ!」
ちょっ、話を聞いてる?

「田辺さん、言ったじゃん?俺ね、昨日、好きな人にフラれたの」

「ふーん、ヒラピー良かったじゃん、好きな人できて」

なんだよこれ?俺ね、何回も言いましたよね?

ダメだこのポンコツ

こいつはこいつで俺の傷口に指を突っ込んでくる

と、ここで
これじゃあ、その人への呪いにしかなれねぇんじゃねーか?

いい、聞いて?聞いてる?
届く事を祈ってます

まず、

あなたの健康を祈ります
あなたの精神の安定を祈ります
あなたの安全を祈ります
あなたのご友人の幸いを祈ります
あなたのご家族の健康を祈ります

これしか無いの、これだけ

そうよ?

あとね、田辺さん?
この件についてはお前は許さないからな





ヒラノ