日本の憲法 最初の話』ができるまで中華民国(台湾)の同性婚の法制化の詩訳の初稿と最終稿の読み比べ付き~ 白井明大

2023年06月12日

もともと、憲法を詩にしてみよう、というつもりもなく、3年前の憲法記念日にふと日本国憲法前文を、自分の言葉につらつらと置き換えてみたら、詩なのか何なのかとくに名付ける必要も感じず、できあがったのをそのまま SNS に投げて、とにかくぼくは憲法の前文が大好きだったから、もうこれ素晴らしいよね、と言いたい気持ちでいっぱいだったんけど、正直を言えば、憲法変えるとか変えないとかそんなこと言う前に、ちょっとこの素晴らしい最高のヴァイブス(ごめ、初めてこの言葉使った……ちょっと意味合ってるかわかんない……ごめ)を感じておくれよ!!!という気持ちを込めたら、いろんな人が読んでくれて、あーよかった、ってそれでそのことは忘れてたのだけど、一昨年の秋に『着雪する小葉となって』って詩集を出したとき、出版記念イベントをしようしようとなって、そしたら担当編集の F さんが、憲法前文の話もしましょうと優しいことを言ってくれて、ああ、あれ、まだ覚えてくれてたんだ、うれしいな……とか思って、イベントでご一緒した宮尾節子さんがさ、リーディングしてくれたんだよね……声に出して読んでてくれて、その後、国会前でも読んだよーって動画送ってくれたりしてね、ああ、もううれしいなあって、原口昇平くんとかもどっかでリーディングしてくれて、じゃあ、次の憲法記念日にちょっとフリーペーパーにして配ってみんべ、と思って、実際に作って配って、そしたらお店の人も親切にお客さんに配ってくれて、しばらくしたら在庫なくなって、また追加で印刷かけて配って、そんなこんなして配りはじめたときに、香澄海さんがネットプリントにしたら、フリーペーパー置いてるお店が近くにない人も手に取れるよ!って教えてくれて、やったことなかったけど、じゃあネップリってやつか、あれか、そうか、ちょっとなんか新鮮だなあやってみたいなあって PDF にしてネットプリントしてみたら、またコンビニでプリントアウトして読んでくれる人がいて、ありがたいなあ、うれしいなあ、とか、そしたら今度は O さんが、こどもが読むのにルビあったらいいかも、とかアドバイスくれて、そんでフリーペーパーのルビVer.作って配って……とか去年してたわけなんだけど、ちょうど編集者の Y さんと打ち合わせのときに、どんな本がいいかなぁなんてアイデア会議してて、あの憲法のフリーペーパー、本にしてみましょうか!!! となにかその場にすごい風が吹いたようなふしぎな感じがしてその勢いのまま意気投合してしまったら、ななんんとと、編集会議で OK をいただいてしまい、もう、去年の初夏ぐらいからだったかな、もうちょっと前からだっけな、憲法のね、条文を詩に訳する、ってことで、詩訳って言葉をかってにフリーペーパー作るときに造語で名付けてしまったのだけど、その詩訳というのを、基本的人権とか、そういうひとつひとつの条文をね、もともとの憲法のを読んでから、ふむむむ、そうか、これはこうで、あれはああで、みたいな感じで、今度は本になるとかなかなかのプレッシャーだから、ちょっと気が向いたから書くか、とかそういうお気軽なノリじゃなかったのだけど、もう、この素晴らしさをどうにかして詩に!するんだ!とか肩に力入りまくったらもうろくなことにならなくて、何度も何度も書き直したのとか、で、けっきょく、まだ企画が通る前に、こんなかなーって試し書きしたのを見返したら、そっちのほうが力が抜けてていい感じだったのだけど、ちょっともう方向違うなあ、やっぱりこつこつ直すかーとか、ああでもないこうでもないして、また、いやいや待て待て、直す、直そう、このままじゃあかん、あそこ直さなきゃ、とか毎晩毎晩、書いては、キリのいいところで今日はおしまい、ってだいたい夜中の1時2時ぐらいまでやってて、で、寝よーと思って風呂はいってるときに、ハッ……!! と気づいて、風呂出てからまたパソコンの前に戻って、そうそう、ここだけ直して寝よう、ちょっとプリントアウトして確認しよう、あ、ここ直したら、こっちも合わせないとだな、とかとか、やってるうちにまぁもうだいたい4時前後になることもまあまああったのだけど、それはそれで、せっせとせっせと書いては直し、書いては直し、をけっきょく印刷所さんに入稿というのをして、そしたら印刷所さんから初校ゲラという、見直し用の活字に刷ったのが届いてきて、それを見ながらまた赤字を入れて直して、次は再校ゲラというのになって、また赤字を入れて直して、今度はなんとかゲラっていうのになって、また赤字を……って、けっきょく本当の本当の本当の最後に、もういちどだけ直してもらったのを、さらにさらにもういちどだけなんとかゲラっていうのを受け取ったのを、もう間に合わなかったら直せなくても仕方がありませんけども、もし間に合うのでしたら、このここのこの箇所だけどどどうかおなしゃすっ!!!みたいな感じで数か所だけ赤字とかそんなめっそうもないでももしよろしければここだけどうにかなりましたらよろしくおなしゃすという細かいところまで編集の Y さんが広い心で受け止めてくれて、印刷所さんがまさかの神!!!!!!!対応で直してくださって、ほんとお手数おかけしてほんとにほんとに直してくださってどうもありがとうございます!!!!!!!!!!!! というような次第で、ようやくなんとかどうにかこうにか、この本ができました、というわけで、憲法のね、人権とは何かとか、個人主義ってなんかときに邪魔者扱いされてるけど、法律用語だと個人主義の反対って全体主義だから、行き過ぎた個人主義はいかがなものか、みたいな言説って、逆に振れて、戦前戦中の全体主義のお国のために犠牲になりなさいとか、そういうおそろしいことになりますよとか、憲法9条っていうと自衛権はどこまで OK かどこから NG かそんなんで日本を守れると思ってんのかいやいや平和主義なんだから戦争ぜったいしちゃだめだとか、そういう話もあるし大事なんだけどその前に世の中がきなくさくなるときって、なんか人の心がぎすぎすして差別が横行したり貧しくてにっちもさっちも行かない状況でほっとかれる人がたくさんいたりするような、そういうのあるんじゃないのって思うから、ジェンダー平等をどんどん実現させて賃金上げて収入アップして生活安定して暮らせるようになるのが、つまり差別と貧困をなくすのが、やっぱ平和にとっていちばん大事なことなんじゃないのかなあとか、そういうことを考えてて、エマ・ワトソンさんのジェンダー平等国連スピーチ詩訳したり、EU がまとまって最低賃金引き上げの取り決めしたのを詩訳したり、そんなこんなの話をしたかったのは山々なのだけど、なんというか、この本ができあがっていった経緯のようなものをどこかに記しておきたいなという気持ちがあったり、今朝ミキくんから抒情詩の惑星にリンク貼ろうかって、なんかめっちゃ人類愛に満ち満ちた DM もらってもう舞い上がるほどうれしかったから、ちょっとこんなことを書いてみているところで、これだけだとナンだから、ひとつ、本に載ってる形と、最初に書いたのと、どんだけ違うんだろ、こんな感じで変わったんだよ、っていうのがわかりやすいのを何か、実際に貼ってみようかと思うのだけど、ふうん、こんな感じなんだ~と読んでいただけたら幸いです。



中華民国(台湾)の同性婚の法制化の詩訳の初稿と最終稿の読み比べ
『日本の憲法 最初の話』(詩訳と文・白井明大、角川書店)より

【初稿】

親密で
他の誰も立ち入れない
永久結合関係


司法院釋字第七四八號解釋施行法
(司法院大法官第 748 号解釈施行法)


同性のふたりは         (2条)
共同生活を営むために、
親密で
他の誰も立ち入れない
永久結合関係を
成立させることができる。

2条で定めた関係は、      (4条)
ふたり以上の証人が
署名した書面で、
かつ
司法院大法官第 748 号解釈と
この法律の意義に基づいて、
結婚するふたりが
婚姻届を戸籍機関に提出することで
成立する。


【最終稿】

親密で他の誰も立ち入れない
永久結合関係


司法院大法官第 748 号解釈施行法(抜粋)

同性のふたりは
いっしょに暮らすために
親密で
他の誰も立ち入れない
永久結合関係を
結べる
つまり
結婚できる              (2条)

2条の関係は
ふたり以上の証人がサインした婚姻届を
司法院の憲法解釈とこの法律により
結婚するふたりが
戸籍の窓口に出したら OK
ようは
普通の婚姻届

ねぇ ほんとうは
ジェンダー平等って こんなにかんたん  (4条)



【原文】
司法院釋字第七四八號解釋施行法
第 2 條
相同性別之二人,得為經營共同生活之目的,成立具有親密性及排他性之永久結合關係。
第 4 條
成立第二條關係應以書面為之,有二人以上證人之簽名,並應由雙方當事人,依司法院釋字第
七四八號解釋之意旨及本法,向戶政機關辦理結婚登記。