「インターネットだけみれば全部分かるようには絶対にしません」渋澤 怜

2021年11月15日

もしもインターネットがなかったら、簡単に分かるようにはしません。

ハイ、分かった人はRT。



闘病アカウント、というジャンルがありまして。
だんだんツイートが減ってきて、ぽつり、ぽつり、と段々呟かなくなって。

ピ、ピ、ピ、プー 心肺停止。死んだイメージ。死んじゃいねーし。で、また、ぽつぽつと呟く。

死は人間あるある。
だから死はもっとも拡散される。
「SNSは共感」「共感は拡散」って、昔の偉いインフルエンサーが言ってた。

新宿南口で焼身自殺した人の写真と動画がSNSに多く出回った。でも彼が焼身自殺してまで伝えたかったことは全然出回らなかった。

死は人間あるある。
だから死はもっとも拡散される。

死ぬ時くらい秘密にしても良かったんじゃない?
いやいや、死ぬ時こそ公開すべきでしょ。だって人が死ぬとこあんまり見なくない? と。

アルファツイッタラーのおじいちゃんの病床で行われた余命カウントダウンツイキャスには、人の死を見たことないティーンが押し寄せた。秘密を晒して、からからに、干からびた死体からも、まだまだ、人は退かなかった。死ぬ前に何もかも晒した人が死んだら見せちゃいけなくなるものなんて、何も無い。

自殺実況ツイキャスが流行る東京。死なんて最も公共的なものだ。新聞に載ってしまうものが秘密なわけがない。

週刊誌に載ってしまうものは秘密か?

不倫を叩く人も、不倫を叩く人を叩く人も、結局週刊誌の売り上げに貢献している。

SNSをが嫌いだとSNSに書いている人も、結局SNSの広告費を釣り上げている。

ピ、ピ、ピ、プー
ピ、ピ、ピ、プー
ピ、ピ、ピ、プー

ひい、ひい、ふー
ひい、ひい、ふー

赤ちゃんの写真はSNSに上げてもまだ怒られない。まだ誰でもないから。

誰もが誰かになりたがっている。
一番とキチガイと死にたいと言いたいとレイバンと一番になりたいが目立つTL。

本屋さんに並んでいる言葉は永遠だったはずなのに。
ここにある言葉は賞味期限が明日のものばかりだ。

切り売りの死。切り売りの詩。四季折々の花を世界中の人が手向けているから、いつでもタイムラインには花が絶えないよ。

冷蔵庫に入ったフリしてアイスと一緒に冷えたがった男の子、あれは棺桶に入ったつもりだったのだ。

死んだくらいでいい気にならないで。死にたいのに死ねない人がいるのに不謹慎です。

切り売りの死。切り売りの詩。四季折々の花を世界中の人が手向けているから、いつでもタイムラインには花が絶えないよ。

いつでも花が絶えない場所。

私の心の一番奥深くの大事な大事な場所は、インスタスポットにされてしまって。多くの人に踏み荒らされ、踏み固められ、きれいに真四角に整ったグラウンドゼロ。もう誰が入っても大丈夫です。花手向けられ。

かの国は、テロに屈しない精神を示すため壊されたにビルよりもっと高いビルを建てたがっているそうで、そういう心性はうちの国には無いなあと思う。




誰もが、誰かの誰かになりたがっている。

私だけの呪文が欲しくてずっと探してる。私だけの呪文を言ってくれる誰かをずっと探してる。

●●好きさんとつながりたい? いや本当はたったひとりと墓場までつながりたい。
たったひとりの、わたしと。
まずはわたし自身のエンゲージメントを高めて出直しなさい。

「#もしもSNSがなかったら、作品を公開することもなかった」って言う人の作品は見たくない。誰かのためでなく、まずは自分を。



SNSは誰も救わないよ。
それは世界が誰も救わないのと同じだ。