「月曜日には必ず悪いことが起きる」 馬野ミキ
2025年01月25日
2030年のはじめの月曜日に雨が降った
その次の月曜にも雨が降った
それから夫人は、月曜日には雨が降るものだという確信に至った
そして月曜日にはよくないことも必ず起こる
最初の月曜日には傘が壊れたし
その次の月曜には地下鉄が五分遅れた
夫人はそれを月の裏側の呪いと呼んだ
次の月曜にも雨が降った
しかし、その次の月曜はよく晴れた
夫人は裏切られた気持でいっぱいになった
その、いわゆる「第四の月曜日」に夫人は身支度を済ませると銀行から大金をおろし
鉄道を乗り継ぎ、雨がふっていたK地方にまで出かけた
夫にはテーブルに手紙を書き残しておいた
「心配しないで!いつか月曜日は終わる!」
K地方の中心地区の駅前で宿をとった夫人は
窓にしたたる雨粒を見つめて声に出してこう言った
「ほうらやっぱり!月曜日には必ず雨が降る」
若い給仕はその声を聞こえていないふりをした
給仕は礼儀正しく静かに食事を運んだ
フォークとナイフを丁寧に並べ、客に負担のない笑顔をみせた
小旅行で気分が高揚していた夫人は
給仕に彼の一日の日当よりも多いチップを渡し
夕刊を眺めた
来週の月曜日の天気を調べるためだ
煮魚の小骨が夫人の歯茎に軽くささった
このように月曜日には必ず悪いことが起きる