「馬野ミキに詩のワークショップを受けるボク」3 けんご
僕の母は音楽家で自分の楽団を持っていた、家にはギターやマンドリンピアノなど楽器がたくさんあった
僕はピアノを弾いてみたくて母にお願いしてみた、母はベートーベンの月光のはじめの4小節を教えてくれた、
ここまで弾けたら続きを教えてあげるよと言われた
とても美しい曲で毎日毎日ピアノに向かって一音ずつ一音ずつ練習した
何度も何度も月光を聴いた、でもどこを押したら次の音が出るかが思い出せない
一つ覚えたら、
母に次押す所にシールを貼ってもらい
一つ一つ覚えた、欲張って次の次までシールを貼ると混乱した
混乱すると今まで覚えたところも不安になってくる
そんなときはシールを剥がして、またはじめからやり直す、そうやって毎日練習した
一音ずつ練習して良かった事がある
一つの音を鳴らすのに何日もかかると憶えた音を弾くときに、
ものすごくていねいに弾くようになっていった
何度も聴いた月光の美しさを
2つや3つの音しか弾けなくても、
なんとかあらわそうとするようになった
はじめの音が出る瞬間から集中して、強く弱く長く短く思いつく限り試す、全部正解の音を出せるとはじめの一音から、月光は美しいんだなと知ったことは、
今でも良い経験をしたと思っている
そしてある日ついに僕は月光のはじめの4小節を憶えた
もう忘れる心配は無い、
繰り返し繰り返し憶えた事は忘れない
発達障害の病院では長期記憶と呼んでるもので、そのエリアに入ればもう忘れないそうだ。
ついに憶えたその日、
母に続きを教えてもらうために
僕は最後の練習をしていた
その日は家に親戚が集まっていて、
親戚たちに僕の月光を披露するのがとても楽しみだった
ピアノのある部屋に叔母がやってきて
練習している僕に、
あら、けんごちゃんが弾いてたの?
お姉ちゃんが弾いているかと思ったわよ。
と褒めてくれた、姉は3歳から何年もピアノ教室に通っていたので、その姉と間違われた事は、僕の自信をより高めてくれた
僕は母を呼び渾身の月光を4小節弾いた、
弾き終えた時
叔母は続きは?
もっと弾いてよ、と言ってきたので
僕は答えた、
ここまでを憶えたら続きを教えてもらう約束なんだよ、
僕弾けたよ、続きを教えてよ。
母の答えは
これだけ憶えるのに半年もかかるなら、続きを教えても無駄よ
お前にはむいて無いのよ。
だった
確かに半年は過ぎていた
僕はピアノにむいてないんだな。
ただそう思った。
何か言いたかったけど、説明するのは嫌だった、
僕の言葉はいつも通じないので
たくさんの言葉で言い返される。
いろんな角度から、僕はきっとこれこれこういう訳でこうなんだろうと言うことを言ってくる。
僕のことをちゃんと分かってくれているなと思えるほど的確に、
僕の気持ちだけを避けて、言い当てない。
僕はどうせダメな人間だって思った。
何もかもがしらけていた。
でも
20秒ほどで終わってしまう僕の月光だけど、それは母に取られたく無かった。
言葉を並べて、
気持ちを人にわかるように伝える事。
そこに僕が弾いた月光の美しさを込めること。
この2つがくっついたものが僕にとっての詩なんだなと、
だから書きたくなかったんだなと、
説明できなくても、誰にも証明できなくても僕はその時月光とつながった。
誰にも言わない、誰も近寄らせない。
そんな気持ちだった。
僕が感じた美しさを人の感想やら理論やらは、きっとバカにするだろうとも思った
そういった正しそうな物には抵抗できなかった
僕は自信が無かった。
ついさっきの事が思い出せない僕が持って良い自信を
当時の僕はまだ見つけられていなかった。
今回
この企画のためにこの話を書いていて思ったのは
月光の続きを教えて欲しかったあの日
子供の自分にその時思った事、
半年の間に感じたことをあの時に
言葉にさせてあげたい、
おそらく、人に伝わる良い詩がかけたのでは無いかと思う。
ここまでをまた、ミキに読んでもらった
書きたい事はあふれて来たけどどうなんだろ?
ココからどうしようかなと思ってるのよね
できる回り道すべて寄るのは小説だとおもう 詩はもっとも最短というか、約分されたところを書くものだと思う 約分にもチャレンジしてみてー
なるほど、
夢中になって書いているうちにテーマから離れるところだった
テーマは
馬野ミキに詩のワークショップを受けるボクだ
僕はミキに、約分にチャレンジしてみるねーと返事をして
直ぐに、
約分の意味を調べた
やくぶん
【約分】
分数の分母と分子を公約数で割って簡単な形にすること。
約分のやり方
約分のやり方は下記の流れで行います。
① 分母と分子で共通する約数(割り切れる数)を探す(素因数分解を行う)
② 共通する約数が無くなるまで、分母と分子に割り算を行う
約分を行うとき、まず分母と分子に共通する約数が無いか探します。
まとめ
今回は約分について説明しました。意味が理解頂けたと思います。約分は、分数を分母と分子で同じ数で割り、できるだけ小さな数(簡単な数)にすることです。約分することで、複雑そうな数を簡単に表せます。
なるほどなるほど
これはわかりやすい考えだ、
ありがとうミキ
コレから書こうとしていた話は全部あの日のけんご少年が思った
その気持ちのまま生きて来た場面達で、
その要素のほとんどは同じ公約数でできている。
約分して良いんだと思った
目的は説明でも、証明でも無い
言葉で感覚を表現する方法を学ぶ事だった。
あぶないあぶない
脱線は得意技だが今は脱線しない方法を学んでいるところだった。
ここまでをまたミキに読んでもらった
話を結んで行きたいんだけど、
どのような方向が良いと思う?
いろいろ、けんごが伝えることについて、あきらめてきたことを 書いたからここからは、そうでなくなってきた自分について書くんじゃない?おれに、詩を送ってきたこととか。
ーーー数か月前、突然、けんごからラインで何篇かの詩が届いた。
俺は文章の人ではないから、そういうのは書かないから、と言っていた けんご からだ。
自分が「抒情詩の惑星」という詩のホームページをやっていることも、詩集を出していることも勿論けんごは知っていたが
自分も何か言葉を、文章を書いてみる、ということについては、けんごは一つの線を引いていたと思うーーー
2ヶ月ほど前に詩を書いてみようと思ったのよね
書こうと思った理由の一つは
部屋の片付けをしててメモを見つけたこと
もう一つは馬野ミキとそにっくなーすの、文字を書き続けてきた二人とバンドを始めたこと
この二つがくっついた時
頭がフワッとした。
詩だよ詩
きたきた
※黄色文字は馬野ミキの発言、及びLINE