「左の神話」湯原昌泰
2025年06月04日
面白いこともあるもので僕の家系は左側が弱い。
祖父は生まれつき左足が動かず、
父は生まれつき左肺が小さい。
そして僕は左膝を折り、
左瞼の上を縫い、
今回、左足に帯状疱疹が出た。
血のつながりを感じるし、
その中に自分もいると思う。
会ったことのない曾祖父は自分と似ていただろうか。
曾祖父のそのまた父は、生涯の中で一度でも、好きな人と付き合えただろうか。
その物語の先端にいて、
もしかしたら僕がこの物語の終点である。
いずれにしろ俺たちは左半身から復讐する。
足の動かなかった祖父の恨みをはらすかのように、トラック運転手になり全国を走った父のように。