「ちんこ置き場」 馬野ミキ

2024年08月28日

畳12畳の
東京23区ギリ片隅のもう24区になりそうなこの部屋に
きみが置いていく
シャンプーやリンス
きれいなルビー色の石鹸や
ほとんどつけなくなったテレビ台の上の
玉虫色の種のじみたヘアピンたちが
領地を拡大するみたいに
少しずつ広がっていく
染み渡るように
侵攻する
どちらがロシア軍か
どちらがウクライナなのか
電気をうす暗くしてから決めよう
俺はきみを支配した後に
降参するから
ユーモアだと解釈して笑ってくれ

小さな戦争をたくさんすることによって
大きな戦争をしないということを発明しようか
どちらの国歌もちゃんと斉唱させない
その言語を塞ぐ次のキスにより

このように
きみが置いて行った わんこの箸置きの上に
半勃起したちんこをのせ
スマホでその画像を送ると
君は、
犬は霊的に
人間より位が高いという認知なので
めずらしく怒るよね
人間を馬鹿にしてもいいけど、犬を馬鹿にするなと

きみの
豊満な胸
豊満な尻
豊満なお腹
きみは、ひとつの星のように丸い
丸いのは姿勢が悪いから
重力は総じて人間の姿勢を悪くする故に
チャンスはこの星を脱する時だ

おれのものを締め出す 
湿り気を帯びた
しまる、
おれの侵攻を
肉体が無意識が拒絶する、きみのシマ
引き籠りの縄張り
島流しにあったような二人が
夜明けに吸う煙草の煙は
東京26区にながれ
このままふたり、世界の空気を 

もう少し汚そう 










馬野ミキ