「へそピアス」前里慎太郎 a.k.a.IC
2021年10月16日
「へそピアス」
耳たぶをコウモリが掠めて
目覚めると 夜の森林公園
どこにもないよ 落ち着ける場所なんて
骨が軋んで ささくれ立ってる
景観保護区域を抜けて
枯れた噴水の底を通り過ぎた
駅前の本屋もきっともうこの街の
忘れっぽさを引き留められない
何か そうだな でたらめな事
しでかしたくなる時は 今だってあるけど
毎日 そんな気分でうろついていた
鉛の様な 不安の塊を引きずって
おへその形が あんまり好きじゃないから
このピアスは開けたのって あの子は言った
私は別に どうでも良いよ
別にどうなったって良いって あの子は言った
マンションのロビーのソファーって
一体 何のためにあるの
どこに行っても怒られていた
やあ守衛さん またあんたか
巨大なディスカウントストアの様な街
大事なものは全部誰かが売り飛ばしたんだろ
毎日 そんな気分でうろついてた
半分諦めた そんな顔をして
このピアスを開けたのなんて ただの気まぐれで
特に理由なんかないって あの子は言った
私はとっても 嘘つきだから
何も信じなくて良いって あの子は言った
ロータリー まばらに人がいて
クソ退屈な街明かり
不思議だね 出会ったのは
なんで俺と君だったのか
勘違いみたいな暖かさを
分け合いながら探してた
俺達きっといつまでも一緒にはいないね
それでも確かに出会った