「ゆうがほ」春野たんぽぽ

2021年09月27日

「ゆうがほ」

ゆうの家で読んでいた漫画の続きが
気になって
残り少ない小遣いで
近所のもうすぐ潰れる本屋に行った
もうすぐ潰れるから
安くなっているかもしれない

ゆうは寝そべったまま俺を見送った
乳房がまた大きくなった
尻の肉が前より付いた
ゆうの身体はどんどん
女になっていく

嫌だって言う
性が憎いって言う

漫画は案の定、安く売られていた
二百円
定価よりうんと安い大型本
ゆうはこの本の女に興奮している
お前だって同じじゃん
口は縁を切る道具ではない
今は違う

ゆうの家に戻る
インターフォンを鳴らさなくても
鍵は開いていた
ゆうは玄関に立っていた
剃刀にはさほど血は付いていなかった
ぼろぼろになった左腕は
脈じゃない方が深く切られている


そんなことしたって何も変わんねえよ
そういうところが女っぽいんだよ

ゆうは俺をきつく睨んだ
俺はゆうから剃刀を奪い取って
自分の腕に切り込んだ

深く切り込むのは怖い
ゆうが俺のもう片方の手を掴んで
ぐっと俺の腕に剃刀を食い込ませるのを
手伝ってくれた

これで兄弟
兄弟だからな

と、

ゆう




















春野たんぽぽ