「わたしの血潮で蠢く者よ」山吹いなり

2023年07月17日

女であるかとか
母親としてだとか
仕事がどうだとか
どの肩書きを 背負おうとも
どれもサイズが合わなくて
お腹を空かせた 浮浪者は
ひっそりと息を潜ませて
社会のレールを覗き見る

何かを背負って勝負をするってとてもかっこいいね

だけど君、それはあまりにも宿命がすぎるんじゃないか?

ほらほら 顔を無くした顔がごろごろと横たわり
こんなにも たくさん蠢いて
ちいさな悲鳴が聞こえているよ

私には それが 耳障りで
それにお腹も空かせているから

ついつい 魔が差して
言葉を君ごと食べ尽くしてしまうんだ

寂しくて 悲しい味がするけどコリコリとした歯ごたえで
噛めば噛むほど 悲鳴は小さくなるから
それは もう 食べごたえがあった

歯が数本欠けたけれど飲み込んだ
とめどなく溢れる涙はそのままにしておいた

私のお腹の中で 君は私の夕焼け色に染まって瞳を閉じる

とても気持ち良さそうに蠢いて目の奥まで 真っ赤だ

どこからか ジャンケンをする子供の声

ああ そうだ
これは自分を賭けた 祭りの余興にすぎない

さあ 今こそハッピーバースデーの曲を送ろう

バースデーケーキはワンホールで
真ん中から 食べてもいいよ





山吹いなり