「プロローグ」多嘉喜
北千住から表参道 北千住から六本木
北千住から渋谷 北千住から銀座
一本の電車、ないし道路を小一時間真っ直ぐ進むだけでどうしてこんなにも違うのでしょう。人の身だしなみと街並みは徐々に輝きを増し、端から端、算数が間に合わない。私のメロディとは正直、交わらない。
職を二度無くした親父と貧乏な暮らし。
終わらない支払い、でもまだ急がない。
He said "It's alright."
心壊してまたしばらく貧乏な暮らし。
What am I?
が、致し方ない。金以外全部持ってるから。
物心がつく前から驚くほど心に残る、財布だけじゃ説明のつかない錆びついた病。三十路を前にして一人、それは命に等しい病だと知る。
「本当の貧乏は...」云々、「なんでこうしないの...」云々。うるせぇなぁ、財布の中身全部置いてから説教垂れてこいよクソガキ。といういつかの安達祐実のような二十歳過ぎとは違い、若いふりはもうできない。
貧乏は財布と頭と心に巣食っていて、一つ一つ取り除き、お湯で溶かすほかはないのです。かつて南青山の児童相談所に反対していた人たちは、全て自分達の意思で所謂「ブランドイメージ」を危惧していたのではなく、その周辺の不動産価値を憂う所有者達に煽られていたことは、一つ一つものを知れば、貧乏でも見えてくるものです。
が、財布と頭と心の貧乏は未だ私の血液を蝕み、癌のようにその身を潜めています。が、しかし、それもそろそろ終わります。財布、頭、心の順に、治る見込みが見えてきたからです。
お金がないことを詩にするのは、これで最後にしようと思います。さようなら、もう寒かったら、暖房を炊いたら良い。腹が減ったら、食やいい。その怒りは、怒りは、イカしたラップか、優しく詩にしたら良い。さようなら、別れのメロディを送ります。
職を二度無くした親父と貧乏な暮らし。
終わらない支払い、でもまだ急がない。
He said "It's alright."
心壊してまたしばらく貧乏な暮らし。
What am I?
が、致し方ない。金以外、全て持っているから。