「ユメのセイ」あさとよしや
気がかりなユメからさめたとき
コカンがへんにしめっているのをかんじた
すこしチビったのかとおもった
休みじかんおわりかけのきょうしつでは
ドウきゅう生たちがどやどやと
まどの方へかけよってゆくので
どうしたのかとたずねてみる
こいつらみんななにもこたえず
みんながみんなまどにへばりついている
しょく手をのばすやつもいる
まどの外にはあらあらしくナミだったウミがひろがっている
まわりのヤツラはウおうサおうしはじめる
みんないちようにみじたくをして
口々に「はやくウミへいこう」といいながら
さっさときょうしつから出ていった
だれもいなくなったきょうしつにいても
しかたがないので おれも下こうすることにした
チュウ車じょうには おれのマイカーがぽつんとたたずんでいる
外はぽかぽかよう気のドライブびより
とりあえずエンジンかけてラジオをながして
ウミへむかってマイカーをはしらせる
ウミへむかうどうろはじゅうたいしている
あちらこちらでクルマのクラクションがなりひびいている
みんないらいらしているのだ
みんながみんなどうしたわけか
ウミへいきたいのだ
どうろの先の方をみると
おじさんがクルマからおりた
そしてウミへむかってはしりだした
そのうしろのクルマのカップルもおりた
やはりウミへむかってはしりだした
するともうあとはみんなおなじように
つぎつぎとクルマからおりて
ウミへむかってはしりだした
これではクルマはまるですすまない
しかたがないので
おれもマイカーからおりてはしりだす
すこしはしって ふとたちどまる
ナミの しおさいの とどろきがヒビいてくる
なにかへんなのだ なにがへんなのだ へんなのはワカるのだが
それでもみんながみんな ウミへむかっていく
だれもがしょく手をのばして ウミへむかっていく
そしてのまれていく あのウミに
のまれたら そのままオキにはこばれる
もうもどってはこない タビだってゆく
それでもいますぐにでも のまれたいのだ あのウミに
みんなのまれたいのだ
おれだっていますぐにのまれたい あのウミに──
──気がかりなユメからさめたとき
コカンがへんにしめっているのをかんじた
すこしチビったのかとおもったが
それはきっと ユメのセイだ
休みじかんおわりかけのきょうしつでは
ドウきゅう生たちがどやどやと
まどの方へかけよってゆくので
どうしたのかとたずねてみた