「下着泥棒と口紅」中村祐子
2022年06月09日
あの人が下着泥棒だったなんてねえ〜
おかんが新聞見ながら父と大きな声でわめいていた。
チッ、今更〜?私はずっとあいつ嫌いだったよ 。やらしくてネチネチしてて
小学生の 私の部屋が見たいと、父の友達であるAが父に 頼み 断られていたのを知っていた。
父の友達だから、ワイワイ呑んだ後我が家に上がり込みくだ巻いて
その挙句にはダウンする、ゲロ吐くわ、なくわめくそんなオッチャンは
いくらもいたけどね、
あいつダウンしたフリして私の足触ったし!
お父ちゃん〜!なんであんな変なの仲間にするん?とずっと言いたかったんだよね!
ああ やっぱりね。
又ある時は
行ってらっしゃいと母と叔母達が促すドライブは叔母の彼の運転だった。
お彼岸の集まりでその日は予想に反して子供が私1人だった。
ぽつんと子供1人ではする事もなく、叔母さん達が可哀想だから、ちょっと
気分転換に連れて行ってあげてよ、というわけだ。
本当は自分達がおしゃべりするのに邪魔だから、そんなところだよね。
さあ、行きも帰りも何を話したのか、どこへ行ったのか
霧の向こうで思い出せない。
とても優しい紳士的な話し方だし運転も丁寧。で
ただ一つ、覚えているのは、おじさんはね
今度はこのドライブのお礼に
君に似合う口紅買ってあげたいと言うセリフだけだ。
多分その辺りをドライブしただけ
だから記憶にも留めないのさ...
その筈だその筈だそうであるに決まってる
...
おじさんという名の人類に勝るものを持ちたい
性の目覚めの前に心に誓った私だった。