「低空飛行」 待子あかね

2021年11月15日

「低空飛行」

朝早くから働いて もう外は真っ暗
日中フロアで過ごしている20人程いる おばあさん おじいさんは
もう みんな 自分の部屋に戻りました
眠りたくないおばあさんは夜勤の人に任せて 
すっかり草臥れて 
家に帰って 気がついたら もう寝なきゃ
今日は 失敗ばかりだったね 

飛んでいないわけではないよ
低いところだけれども 飛んでいるつもりです

やりたいことが上手くできなくて
行きたいところへ行けなくて
日々 繰り返される生活に震える 怯える 戸惑う
生活は 止まらない やめられない 待っていてくれない

もっと 遠くへ行きたいよ

自己否定された 怒鳴られた言葉が巻き付いて 身体まで重たくなって
なかなか上手く飛べないね

助けて

誰にも聞こえない ひとりぼっちの真っ暗闇 屋根裏部屋で 叫んだら
闇の中から それは母の声になって 
助けて 助けてほしかった と 自分のところに戻ってきたのでした

もっと軽くなれ そうすれば 飛べる 飛び方は きっと忘れていないはず

真っ白なペンを持って 書いて書いて書いて 軽くなれ そうすれば 飛べる

しょっている苦しい言葉に負けない言葉を綴れるように
持っているのはペンだけでいい 
ただペンを持って 飛ぼう








待子あかね