「嘘をつくのが好きなら詩人になろうよ」椿美砂子
長く生きているととんでもなく嘘をつく人に出会う
ついてもつかなくともいい嘘ばかりをつく人に出会う
そういう人は人に迷惑をかけるタイプではなくてどうでもいい嘘ばかりをつく
真夜中十二時になると死んだ兄が私の部屋のドアの前に立つのと真剣な顔でいう 興味をそそられる話に夢中に聞いてしまうのだ
時々辻褄が合わないのでこれも嘘なのだと呆れながら笑ってしまう
昔恋愛相談を聞いていて
泣きながら彼が私を思って死んでしまったらどうしようという 振られたのは彼女だ
あんまり好き過ぎて好きだと自分でわからないのじゃない?と言うと
それはないと言う
この話は嘘とはニュアンスは違うけれど
詩の魅力はついてはいけない嘘はないということだ
たまにこの人の言ってる事は嘘に塗り固められていると感じる詩人がいる
嘘というより思い込みかもしれない
なりたい自分を語る
なりたい自分になれるのが詩の魅力だ
詩はある種の物語性もある
ある詩人がくれたお手紙に
妄想しろ
妄想こそがポエジーだ
詩を書く事は心を絵空事に浸らす事だ
人は生まれ変わる事はない
この言葉は大嫌いなのだけれど
人生は一度きりだと思う
神様だって実はいない
人が縋るもの欲しさにあつらえた偶像でしかない
今の自分が嫌いな人はいっぱいいると思う
私だって私が嫌いだ
でも詩を書く事で心を保っている
詩の楽しさは幾らでも嘘がつける事だ
詩の中では幾らだって嫌な奴を罵れるし殺すことだって出来る
私はどれだけの人を詩の中で仕留めて土に埋めたかわからない
私は詩を書く人 詩人が好きです
だから
うんと嘘をついて
嘘をつくのが好きだったら詩を書こうよ
お勧めの映画をひとつ
妄想をして心を保つ夢見る女の子の話
救いがない程不幸な女の子だけれど
きっと何かがこの映画を観ると得られる
主人公の大きな黒人の女の子は多分ハーレムを語る素晴らしい作家になっているだろう
映画プレシャス