「日乗の主体、客体、宿望」村山トカレフ

2022年08月31日

電話の繋がらないコールガール、処女膜はなにも捕捉しない、ガリガリの力士と三段腹のマラソンランナー、サンマの煌めきとダボハゼの貪欲さはペーソスを誘う、無免許のソープ嬢と自転車に乗れないピンサロ嬢、綺麗な大便とテロリズム、絶対に外さないタイガーマスク、黄金色の小便とリアルゴールド、老婆のパンチラ、感じない鋭い尿意、硬いゼリー、気に入らない好物、タイドプールに住む深海魚、泣きながら老爺を刺し続ける幼児、誕生日に自殺する牛、詐欺の天使、サギの仮面を被ったインコ、電車を乗り継いで江戸時代へ行く、令和のバス停で昭和行きのバスを待つ、交通事故現場でSNSに接続しながらマックを喰らう、水中で笑う赤子、暑い暑い死にそうだと鳴いている蝉たちと虫かごを振り回すトウモロコシの群れ、投げやりな弁護士と緻密な性格の土佐犬、原付より遅いウサイン・ボルト、分度器で切られたキュウリとチェーンソーで切られた首、クロッチの染みが北海道の形で愛おしい、少年のふぐりを口に含みながら女児の乳首に集る蝿を払う手、胡桃ほどしかないおれの脳味噌と米粒ほどしかないアイツの脳味噌、盲目のピンクローター、ボス猿の痴態とメス猿の色気、クロスカウンターを交わす猫と躱す鼠、窮鼠人を噛む、サガワは女の乳房を噛む、微笑を称えるアスファルトに張り付いたガム、真っ黒な白人、行列に並ぶ浮浪者、煩悩は108どころか無限、石女が産み落とした悲哀、激辛のドーナツとトマトジュース味のコーラ、二本足の百足、既にこの世に存在しない殺人犯と尋ね人、あの世で邂逅する被害者と加害者、決断、逡巡、放蕩、諦念、安寧、不安、緊張、怒張、屹立、吃音、切断、縫合、咀嚼、廃疾、禁治産者、おしでめくらでつんぼ、土方、カタワ、言葉狩りと亡くした小指、また動物か、またクイズか、またCMか、また食い物か、また通販か、また衝撃映像か、死なない事故動画しか流さない、麻薬カルテルの拷問に勃起する、どん百姓の睡眠を邪魔する権力者、性欲の粘り気と納豆の臭い、こけしの諦観、肛門に繋がる成型肉とアナルパールの職人気質、新幹線の中で乗る三輪車、柔らかなこどもの髪の毛と行きずり女の腋毛、憧憬を抱いていた人間の小便はやはり飲めなかった、ワイフの躯と5年着回した捨てられない部屋着、打ち上がらないロケットのいたたまれなさと苛立ち、穴の開いたバケツで水を汲む仕事、朝立ちする陰核としない陰茎、空から降ってくる不幸と椰子の実、スプーンとフォークとフォークギターを抱える詩人、私人、公人、我儘な盲導犬と従順な野良猫、効かない風薬と覚醒しない覚醒剤、何回も打つ何回でも打つワクチンと畜群、ブスの網タイツを貪る受刑者、引き篭もりのキャンパー、識字率ゼロパーセントの社会の潔さ、それでいいのだとつぶやくツイッター、言葉は最強で最凶な核兵器、シャチョサンイイコイルヨ、中年女のTバックがたなびくベランダ、猫の忍者、金髪で肥満の矢吹丈、エンジンレスの車、醤油の染みがついた望郷じょんがら節、日本海に沈む1セント、放火魔が焼いたバンガローと林間学校のカレー、手話でする猥談、達磨とデュラハーンの密会、盗撮された過去の過ち、悔恨を蔑む娼婦、永遠に降りない夜の帳、よけろナッパ、おすオラ極右、一生のお願いを繰り返すオウム、パラレルワールドで待つ永遠の待ち人、ゲットーに住む王様、カチリカチリと進む時計の針と一向に歩き出さないおれ、エロい形の大根、シマウマのまたぐらから立ち上るむせ返るほどの雌臭、汚れつちまつたパンティの悲しみが宇宙に果て、厭な面をしていやがると鏡を見たおれは思った、「美川憲一 エロ」でググッたおれはどうかしている、タコに憧れるイカ、顕微鏡でしか見えない希望とそこら中に掲示してある絶望、ほっこりの胡散臭さともっこりの健全さ、時間に厳しい乞食とルーズソックスに魅せられた中間管理職、スズメの涙の洪水で溺死する、今日もどこかで苛められている人間の憤怒と虐待されているこどもの慟哭がおれにはわからないし聞こえない、たったそれだけの金子で!、澱のように淀んだ優しさと澄明な厳しさ、張り付いた笑顔と業腹な性根、パン屑を追いかけるストーカー、サリンだって飲んでやるという似非覚悟、神様なんていないと嘯く仏様、野糞を投げるゴリラとそれを口でキャッチする芸達者なマジシャン、オンビートとオフビートとインアウト、ステテコに飛び散った落ちないカレーの染み、いつまでも消えない油性マジックの落書きとアイツへの殺意、オリンピックの狂気と集団発狂とピザトースト、ワンカップの哀愁と温情、耳に痛い四字熟語と幼子の忌憚のない感想、無味無臭なクサヤ、ドライフラワーウエット、土中に隠された優しさと劣情、100均のドラムセット、ピカピカに磨いた10円玉とくすんだ大陰唇、堅牢な豆腐と決して破れない君との絆、遥か彼方で微笑む成功と常に背後にいる失敗、手先の器用なアリクイ、吸茎、球形、休憩、求刑20年、壊れたラジオにバターを塗るゴッホ、ヒマワリを飛び越えるブブカ、魔法のゴザ、足拭きマットの屈辱、「おい、それはおれのタバコだ」、君もトリスもマリワナも同じやうなに愛している、口元のイボ、剥き出しの感情と歯茎、滲み出る欲望とこびりついて落ちない恥辱、こけおどしの優しさが襲う朝、シンナー臭い犬、自意識という飛び道具、初乗り10万円の減算式タクシー、グロスが塗られた君の艶やかな唇とゴキブリの背中、死んだフリをする蝉と横暴な体育教師、おれは君のコンタクトレンズ、おれは君の不安と不満と経血をすっかり吸収するだろう、吐き出すのはいつだって呪詛でしかない、おれは君で君はみんなのもの、死なないウスバカゲロウに恋をしたミールワーム、おれはまだ産まれていないのかもしれない、始まりの終わりの中間、愛は蜃気楼のゆらぎか砂上の楼閣、価値観の相違は希釈もしなければ溶解もしない、食パンに塗られたラマの唾、錯覚に陥る花嫁、斜視のトンボ、導火線の先にある安寧、爆弾を抱いて眠る少年、泥水をすする少年とミネラルウォーターを喉仏に垂らしながら嚥下するサッカー選手、君は知らない目の前のシーザーサラダにおれの精液が混入していることを、君は知らないおれが飲んでるバーボンに君の糞尿が混入していることを、卵掛けご飯とゲボ、独り言を聞かれ赤面のち憤怒した今日、きたねー面と心だな、殺してやろうか、おれもきさまも死んだらまた会うのだろうか、めちゃくちゃにしてやる、もうたくさんだやめてくれ、おれの足を引っ張ってくれ、すべてがめんどうだ。








村山トカレフ