「朝の小鳥」山本恭子

2024年09月27日

一番の早起きは誰か
眠らないのは早起きと言えるだろうか

眠れない夜は
眠らないで
鳥の鳴くのを待つ

ある春の朝はホトトギスだった
明け方でなく夜中
ぽつりと鳴いた
トーキョートッキョキョカキョク
カラスもおかしな時間に鳴く
鳥も寝言を言うのかな

声の高い小鳥たちは
空の焼ける前
一羽が鳴いて
それに応える鳥がいて
たちまち賑やかになる

存在を伝え合い
一日のはじまりを讃え合う

食べもののありかを
家族を脅かす存在を伝え合う

歌いながら
愛を育む

一日の終わりにも
ひとしきり歌う
まだ残された
最後の光に向かって
体を休めるところへ落ち着くまで



2017年から通うようになった福島県の大玉村というところにスタンウェイのグランドピアノがある古いおうちがあり、彦太郎さんという元気なおじいさんの生家であることから「彦ハウス」と呼ばれています。その家で「アーティストインレジデンス」という滞在型制作、創作活動に取り組んだ松本悠以さんが制作の仕上げとして、去年の秋に彼女の人生初個展を丸一ヶ月に渡り開催しました。書初めに「個展開催」と書く意気込みに心打たれ、個展の終わりに私も演奏の機会をいただき、大玉村で書いた詩を手直ししたものです。抒情詩の惑星にも執筆しているアレクセイ渡辺さんやぺぺさんの友達であるクマさんも来てくださいました。




山本恭子