「東京はしばらく雨が降っていない気がする」 もり
よね
寝るときに雨の音がきこえるのは好きだ
次の日に予定もなければ最高だ
エモいぜー
生まれてからいちばんはじめに住んでいた家には瓦がなかった
なかったというか何故か途中から外された
「大家さんが外す言ゆうき」
と おふくろは説明してくれたが
まだ自らの鼻くその美味さがわかるような少年にとって
この🏠がそもそも大家さんの🏠という認識は皆無であり、賃貸なんて概念は持ち合わせちゃいなかった
大家さんつう人は、たまに封筒に入ったお金を持っていくとお菓子をくれるただの優しいおばあちゃんだった
今ではわかる
わかるというか色々と巡らす
大家さんも瓦を新しくする金がなかったのかもなあとか
てかお菓子分家賃値引いてくれよ w
とかね
とか おれも大人になったのか とか
瓦のない屋根に南国土佐の夏の太陽が反射する様はめちゃくちゃにまぶしく
太陽に住んでいるようだった
「これじゃサティアンや」とおふくろは瓦なきことを嘆いていたが
もちろんおれはサティアンの意味など知らぬし
オウムとは鳥のことだと思っていたので
鳥で大騒ぎしているテレビに
平和な星にやって来たんだなあと感じたりした
高知県は
全国でも雨の多い地域のひとつで
夏などは頻繁にバケツをひっくり返したような雨が降る
そいつらがトタン屋根に当たったときの轟音は凄まじかったはずだが
小さな頃からその環境こそ当然で必然であった少年にとっては
雨など少し棘のあるララバイでしかなかった
家の前の道も 膝の高さまで水がきて
避難するから大事なものをまとめろ、と親から指示出て スーパーファミコンを抱いた
小4のとき 大家さんが貸家を壊してマンションにするということで
500mくらい先の別の貸家に引越した
新しい家には瓦があった
しばらく経って 自分が生まれ育った場所に行くと
そこは5階建くらいのピカピカのマンションになっていて
同い年くらいのピカピカの子どもたちが
駐車場でボール遊びをしていた
あの頃から変わらない
この中の
どこかの何か
ずっと