「沈黙のメロディー」山吹いなり
2024年05月07日
孤独を愛せない わたしは
涙に嘘をつけずにいた
涙を拭うことで
わたしは孤独に愛されていた
言葉に縋りつくたび
傷だらけになる わたしに
孤独は 言った
言葉は 変幻自在で有る様
本当のことしか言わないお前だ から
これは、持ち手のないナイフ
研げば研ぐほど、生まれる沈黙
傷は癒えても血は消えず
やがて全て返り血となる
それから わたしは 無我夢中で
うまれた言葉を 細かく千切っていった
小さな悲鳴に 応えるように また言葉がうまれ
言葉を千切ると 悲鳴があがり
そこから また 言葉がうまれる
だから 悲鳴も千切った
神さまだって本当のことしか言わないのに
こんなの おかしいよ
たまには神さまも嘘をつけばいいのに
死んでいくために
生まれるなんて 変だし
それすらも 許されたい なんて醜い
だから それすらも 千切った
呼吸を整えて 両手を見れば
紺色と黄色で まだら模様に 染まっている
言葉にも血が通っていたんだ!
そして確信した
両手を重ね合わせて
満月にかざすことができれば
夜空に虹を作り出せることを
ああ、宇宙よ
月よ
虹色に光る涙よ
夏の夜を唄う蛙のように
でも決して言葉を交わすことをせずに
沈黙を大地に響かせましょう
眠らない草花が歌いだした時
わたしは孤独を愛せるでしょう