「現代詩とは何かー答える」⑩ お前の頂点は、それか!? 平居謙

2022年08月01日

シリーズ 短小突貫ヘンタイ式連載
「現代詩とは何かー答える」⑩
お前の頂点は、それか!?
-ある衝撃的な皮肉について


もう随分前のことになるが。Oさんという若い詩人が酒席で僕に噛みついた。口調は静かだがやっぱり噛みついたのだ。

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「平居さん、終ってますよねえ」と彼はにやにやと言う。おれは始まっても終わってもいないけど?彼は続ける。「G代詩手帖に連載してた頃が華で、もう、今なんも連載とか無いですよね」僕は、この男の頂点はG代詩手帖であって、随分と小さなやつだなあということがよく分かった。小さいついでに胡麻に混ぜてすり鉢で磨り潰したろか!


「G代詩手帖」は僕の学生時代からもちろんあって、すでに詩の世界の中できらきらと輝いて見えた。なぜ輝いているかと言えば、難しい批評がたくさん載っていて、目がちかちかするからである。それに、用紙に使われている紙が結構目に刺さる強いホワイトであることにも関係しているだろう。歴史的に振り返って多くの詩人たちを輩出してきている。という人もいるし、それは事実として完全に間違っているとは言えない。しかし、自分で育てたというより戦後詩を作ってきた輩をうまい事取り込んで、スターであるかのように見せかける上手さに長けていたのだと僕は考えている。


しかしそんなことはどうだっていい。問題は「G代詩手帖」が頂点だと考える若い書き手がたくさんいるということだろう。


何故問題かというと、その雑誌が「現代詩」と名乗っているせいで、現代詩というのが「G代詩手帖」とニアリーイコールで考える人が多いということである。だから僕なんかもこの「抒情詩の惑星」で「現代詩とは何か」なんて連載をして、少しずつその洗脳を解いてゆかなければならないのだ。ついでにもう一つ問題を言えば、G代詩手帖をはじめとする詩の世界がスターシステムを有していないことである。僕は自分でG代詩手帖社で詩集を出してもらうまで、まさかこの会社まで自費出版じゃないと思っていたのだった。出版を認めてくれれば費用も出してもらえるとどこかで考えていた。笑うよね。そしてもっとツミブカイのは、スターシステムを有しているかのようにふるまっているところだ。多くの人は騙される。僕の知り合いの大学教授も「G代詩手帖社だけは詩集を自費じゃなく出してくれるらしいねえ」と知った顔で話していた。


たしかにG代詩手帖社のG社長は、自費出版だとは口が裂けても言わなかった。どういう言い方をするかと言えば「どのくらいお世話いただけますかねえ。」と言うのである。お世話?最初僕は分からなかったが、「どのくらいあなたをキーステーションとして販売が可能なのか」ということだと、話しているうちに分かってきた。


上手いもんだね。自費出版をさせるというプライドさえ持てないで、あくまでも任意で著者が勝手に買い取るという雰囲気に持ち込んでそのルートに乗せる。これはG代詩手帖社だけではないが、同社にどれくらい貢いでくれるかによって、その階級がアップしてゆく結社システムを有しているだけの話である。そこを契機に売れた詩人がいたとしても、育てる力がないわけで、他所に流れてゆく。その後売れても同社の実力というわけでは決してないのである。


そういうところに書いたことを「頂点」と言ったOくん。この間偶然、十数年ぶりで近鉄電車で出会ったけれど、随分みすぼらしくなっていたね。お若いのに。と僕は言わなかった。ああ、君の頂点は、僕にあのイヤミを言った時だったのだなあ、とも言わなかった。じゃあまた、と降りてゆくO君の背中を眺めた。で、僕の頂点は?この「抒情詩の惑星」に連載してる今現在、に決まってるじゃないか!







平居謙