「美しい浜辺求め」山本恭子

2024年09月30日

制作メモ:2024年9月8日 今年始まった「山本恭子+馬野ミキ」というデュオ活動で、荏原中延の26周年を迎えたスナック美浜にて初めて演奏した時に書き下ろしたものを微修正。


夕闇が広がり
赤い看板に火が灯る

間口の狭いやや急な階段を 見上げれば
街の音とは別の気配
時折 うた声も聴こえる

家に帰るその前に
家ですごした その日の仕上げに

いつもと同じコース
いつもとは違う道のり

心の中の 美しい浜辺求めて
一日の終わりにさまよい出る

二十五年の年月
どれだけの人が
階段をのぼって 降りて しただろう

扉をあけて 目に入るもの

赤いカウンター 赤い椅子
壁の鏡
氷の入ったグラス
スナック菓子
だれかのお土産 今日はお稲荷さんかタコ焼きか
花瓶には季節の花

変わらないものと
変わり続けるもの

なじみの顔触れ
遠来の客
決まってあの席に陣取った
いまはもういない だれかの面影
時には初めての顔も加わって

明日はだれが扉をあけるだろう






山本恭子