「詩集・絶望していろ、バーカ/モリマサ公(しろねこ社)を読んで」椿美砂子

2023年06月21日

 痛快である
まるで岡崎京子のコミックを読んだ後のような軽やさが埋まった詩集である
エッセイ的要素も含まれている
 先日の東京文学フリマでご一緒になった彼女は見るからにキュートな女性だ
少しだけ人生を斜めに そして楽しい事を常に模索している感がある
彼女はポエトリーも魅力的だ
お逢いする迄は彼女の詩を読んでいた私は彼女の詩から連想する壊れた感を感じていたがお逢いした彼女は絶望という言葉を掌で転がし人生を楽しんでいる大人の女性だった
 詩集絶望してろ、バーカ
このタイトルは彼女にしか作れないタイトルだ まさしくこの絶望してろ、バーカは彼女自身へのメッセージなのだと思う

柔らかくて湿り気のある赤ん坊の肌状の空間の薄いグレー。
空の成分について考える。

この一節で不意に東京の汚れた空を思い浮かべた、スモッグだらけの繁華街のビルディングの屋上から見上げた空だ
そこに何故 赤ん坊という言葉が出て来るのだろう 
多分彼女は汚れたこの世界から初々しい何かを見つけたのかもしれない
それは言葉の持つ力のようなそんな眩いものを
 この詩集は声を出して読んで欲しい
理不尽な世界の片隅で詩人モリマサ公は
ふざけんなよ
おい、私を見ろよ
私はこんなに生きているんだよ
と叫んでいる
彼女の詩はポエムだ
紛れもないポエムだと思う
音楽が聴こえそうなポエムです
 是非手に取って読んで欲しい
読みながら私も詩を書きたくなる
そんな胸騒ぎに似た欲望が生まれてきそうな
詩集だ





椿美砂子