「負けるために生まれた」(ポエトリー・スラムのために)大島健夫
2021年09月27日
負けるために生まれた(ポエトリー・スラムのために)
負けるために生まれた
負けるために生きてきた
ここまで歩いてきた、自分の心をちぎって火をつけ
両手に抱いたその炎だけを小さなともしびに
一度も明けたことのない闇の中を
足跡は風の中に消えた
食いしばった歯は糸を切ることもできず
握りしめた拳には紙を潰す力もない
本当に苦しい時には
「苦しい時に助けてくれた誰か」は決して現れない
ひとり倒れ、そしてまた立ち上がろうともがく時
ひとり泣きながら叫ぶ以外にどうすればいいというのか
負けて負けて負けてきた、負けてもいいと思ったことはないのに
一昨日を負けた、昨日を負けた
傷つくことに慣れることはできない
痛みをなかったことにできない限り
しかし痛みをなかったことにすることはできない
流れる血を止められない限り
今日にたどりつき、大きくえぐり取った心のかけらに
魂の底に沈んだあらゆる感情の死体が生成したガソリンをぶちまける
この火を見せてやるから目を閉じろ
この火の名前を教えてやるから耳をふさげ
俺は負けるために生まれた
俺は負けるために生きてきた
この火とともに生きてきた