「Iの目覚め」恭仁涼子
2022年06月24日
彼女は神童の誉高き娘。
「才媛」ではない。
弟がいるかもかかわらず
「長男」として育てられたので
「神童」なのである。
彼女は神童の誉高き娘。
かなしいことに
その身体には穴が空いていて
伸びる手があり
ある日に彼女を女たらしめた。
たしかサーティーン
こんなつまらない文章を
書くために
彼女は神童を辞めたのではなかった。
彼女はまったき悪童であった。
耳を不意に触れられて
目を見開いた悪童
こんなつまらない文章を
書くために
背筋に何かが這ったのではなかった。
こんなつまらない生理現象を
引き起こすために
長男にも神童にも才媛にも男にも女にもなりたくない
彼女はただ
わたし俺僕あたし私になりたかった。