みきくんこんばんは 三 すなけちゃん(snake)
みきくんこんばんは 三
日本も十一月が近くずいぶん寒くなってきましたね、でもこのくらいの寒さではまだまだスコットランドのアロアの真夏で、今日の天気ならアイスクリームは売り切れです。
アロアの町は前回話したとおり治安の悪い小さな町です。
小学生が煙草を巻紙で巻いていたりしても、担任の先生はあれは薬物ではないから問題無いと言ってしまいます。
そんな担任の先生はベロにピアスがありました。
子供のクラスメートで仲良しのアーロンは五歳にして五人兄弟の長男です。
お母さんは二十二歳らしく、妹は七か月年下で同じクラスにいます。
一度夜遅くなったのでアーロンを家に送っていったら、赤いショートヘアの目の下に濃いクマのある恐ろしいお姉さんがドアを十センチだけ開けて、「あんだ、誰?」と挨拶してくれました。
お母さんだと思います。
アロアの一般人範囲内です。
そんな中、姉が孤児院から年頃の子供を一定期間引き取ってファミリー体験をさせるプログラムに申し込みました。
ボランティアなのか報酬が目当てかよくわかりませんが。
そして新しく姉の家にやってきたのがナタリーという十六歳の女の子です。
私は十六歳の女の子と聞いていたのでピンクのかわいい手袋をプレゼントにと用意しましたが、ナタリーは熊のように大きな手だったので喜ばれるプレゼントにはなりませんでした。
彼女はショートヘアのパンクスタイルで自称レズビアンです。
顔はすっきり細いのですがバーバパパのような体形で体重が七十キロくらいです。
孤児院育ちですが母親は近所にいます。
アロアの一般的な中毒患者なので子供を育てられないようでした。
母親の弟だか兄だか、つまりナタリーの叔父が遊びに来ましたが、こちらもよく痩せていて重度の中毒者のようでしかも幼女いたずら常習犯で懲役から帰ってきたところです。
そんなナタリーはシャワーが大嫌いで恐ろしい臭いを発しています。
どれだけ頼んでもシャワーは嫌がります。
部屋はひどい有様で、ベッドはベッドマットがむき出しで布団は使いません。
部屋の端に山になった洋服やら毛布やらにまみれて丸くなって寝ます。
インターネットの出会いサイトで知り合ったアメリカの女性と付き合っていると言っていました。
そんなナタリーにとうとう姉の家族は全員ギブアップしてナタリーは施設かまたは次の家に行きました。
問題は彼女の部屋の大掃除です。
全部捨てるだけですが、彼女は何か動物を飼っていました。
フェレットを数匹飼っていましたが、一番大きなお父さん一匹だけが生きていて、生まれたらしい子供たちやお母さん等他のフェレットは頭だけ残してお父さんに食べられていました。
それからすぐ道端でナタリーに会いました。
アロアは小さな町で、信号機がひとつも無いくらいですから、誰でもすぐに道端で出会います。
アニメのドラえもんやサザエさんのように簡単に出会います。
ナタリーは、子供を未成年で産むと国から別の手当のお金がもらえるから今から産むんだと言っていました。
そして友達が妊娠させてくれたと訳のわからないことを言っていました。
全く信じていなかったのですが、それから半年とちょっとしたあと、ベビーカーを押しているナタリーに再び会って本当にびっくりしました。
ナタリーは今四十歳手前くらいでしょうか、ふとたまに今頃どうしているのか気になります。
今回たくさん出てきた薬物中毒患者さんですが、どのくらい多いかというと、たとえば薬局では中毒患者の矯正プログラムとして薬物の代用の飲む液体を処方しています。
まず病院へ治療したいと言って処方箋をもらいます。
それを薬局へ出すと薬剤師が薬物代用のハイになる赤い液体をキャップ一杯だけくれます。
この液体は乱用を防ぐために一日一度だけ、しかも薬局内で薬剤師さんの目の前で服用しなければいけません。
その人たちでいつも薬局がにぎわっています。
こっちは歯磨き粉が買いたいだけなのにその人たちは一人が要する時間が長いので、ずいぶんと待たなければいけません。
そのくらい町の中で自然なこととして日常に溶け込んでいます。
では、今夜はこれくらいで。次は健全な学校生活のことをお話ししますね。