スキゾキッズ21/前里慎太郎 a.k.a.IC
「スキゾキッズ21」
鮮やかな手捌きで 軽やかな足取りで
するりとすり抜けて 逃走を続けた
在りし日には スキゾキッズ
そんな風に呼ばれたりもした彼の
逃げて 逃げて 逃げた先は
レオパレス21 ウィークリーマンション
派遣会社に登録した
パンクス達は自分の毒にやられてしまった
あまりにもシャイ過ぎたんだ
残ってるのは殆どヤンキーだよ
喧嘩が弱く 強くなろうとしないのが本物
そして本物達は その本懐に従って
チキンレースを死んだ またはその話を中断した
湿った しみったれた 昔ながらの
畳の部屋などごめんだと思っていたが
意匠や 思い入れのない 安っぽく
ただ単に白いだけの部屋の
汚れのなんと汚く見えることか
新品である事しか想定されず
異常に耐用期限の短い物たち
それはスキゾのライフスタイルの要望
100均は我々の見た浅はかな夢
ガンモって映画があったのを覚えてる?
あれはばらばらのシーンをカードに書いて
引いた順に並べたんだって
そのぐらい俺達 うんざりしてたんだ
起承転結に 勧善懲悪に
喜怒哀楽に ロックじゃなきゃなんでもいい
そこから逃れるために 鬼畜になった奴もいた
何が言いたいって
誰かの命日 かわいい犬や猫
政治への怒り お腹がすいた
面白い看板 次の瞬間には
別の話してる タイムラインを写すスマホは
脱構築の果てに 置いてあった本
ポストモダンの理想
つまり目の前の世界は
殆ど望み通り
我々の見てた夢に
色と匂いをつけたもの
それにしても こんなものだったか
どっかで誤魔化されていやしないか
間にパソナが入り込んで
中抜きされてるんじゃないか
と今さら考えてみようにも
難しい事を 簡単に
伝えようとばかりしてきた脳に
浮かぶのは平仮名のコピーライトばかり
もう簡単な事しか考えられなくなってた
ただ白いだけが取り柄の部屋にて
意識の浅瀬で 暴風雨に耐えながら
しがみつく様に 頭から最後まで
彼は一冊の文庫本を貪り読んだ