「放たれて」カワノアキヒロ
2022年02月26日
零か百か
だと能がないなと思ったが
それは素直な二択だと
自分の胸の内を
静かになぞってみる
すると
生きていることが
わかる
そして次に
首の動脈に沿って
小指を押し当てて
生まれたときのことを想う
覚えてなどいないが
わかる気がする
どくん
どくん
足の裏から鼓動が聞こえる
それが答えだったのかもしれない
私はとっさに
違います!
違います!
と二回応えて
自分の重さを知ることになり
強いめまいを覚えた
あなたの
デリカシーは
既に
売り切れです
放たれて
今
声出せば
時
本当のことをいっているのだろうか?
白か黒か
それがわかりやすいと思ったが
あまりに安直だと考え直して
自分の胸の内で
もう会えないあなたのことを想う
すると
自分はまだ立っているのだと
わかる
そして続けて
世界の小さな深呼吸に
深い祈りを捧げて
またも生まれたときのことを思う
知る由もないが
わかる気がする
放たれて
今
夢追って
時
そう
本当のことをいっているのだ