katana/馬野ミキ
「katana」
俺が総理大臣になったら
自衛隊を廃止して軍隊を整えたい
つまり陸・海・空を廃止し
侍を配置し
刀を装備させたい
にっぽんの武器だ。
この、
われわれのような
たような 人間のようなものが
七十億もいるとすると
やっぱたまには戦争や、
人を殺めることがあっても 致し方ないのだろう な
だけれど人のいのちを
タマを
とった場合、その命の責任を
人は一生
負わなくてはならない
動物はピュアだ
赤ちゃんはきっと純粋だろう
だが彼らは 一つも責任をとれない
責任をとれるのは 人間の 大人だけだ
俺たちは遠くからボタンを押して
分からなくなってしまった
おれたちは 遠くからクリックして
名まえを知らない奴を
100人一度に殺して分からくなってしまった
愛国心とはやがて
敵国のもっとも弱い人間を をも 守るものへと
昇華しなくてはならない
刀を持った我が国の軍隊もまた
にっぽんの未来を担う子どもたちや
愛する恋人や、家族を
守る
為に
他の国の、人間の
いのちを、殺すようなことが
あるのかも知れない
だが日本の兵隊には相手の眼を
ちゃんと見て 一人一人を 大切に殺せ、
と俺は続ける。
相手にもまた、
愛する祖国や
子どもたちや
友人や
おばあちゃんのひざや
裏山の秘密基地や
あのきつい傷や
中学生の時にコンパスで机に掘った「逃げだしたい」や、
が
あることを
ちゃんと知って
わかって
それでもなお、
殺さなければならないと
兵隊としててではなく
人間として
きみが本当に
そう信じるのなら
刀を
抜け。
そして殺せ
人間の眼をみて
その人間の命を、殺せ。
ねえ
高度文明とは
ウォシュレットでケツの穴についた糞を温水で洗い流すことなのか?
何が文化だ
地球の人間たちの生活の根底を支配しているものは、
愛や夢や理想ではない
何千前からずっと変わっていない
「不安」と「恐れ」だ
俺たちは隣人の名前さえ知らない
そして人を殺すことは 傷つけたことは 致し方なかったと言おう
だが君はいつか、
それを思い出して 号泣しなくちゃならない
それが人間だ
これから俺らが生きて
或いは何かを大切にしたり
守ろうとする時、
時として
誰かを殺すことがある時も
あるのかも知れない
そして、殺すのかも知れない
だがそれを一生背負え
そうして毎年、甲子園の夏の大会が終わったころに
墓参りに行こう
総理大臣として俺もつきあう
花をたむけて、手をあわせよう。
GOKU編集「読みたい詩人」より