「初夏に溺れる光のように」かわいあやの
2025年08月29日
木々がざわめくように
大勢の蝉が鳴いている
鳴き声が
身体の中まで響いてくる
それに共鳴するように
私の鼓動も広がっていく
風が吹かなくても
生きていることがわかる
影の中では
鉛色は暖色とみなされる
世界を抱きしめるように
一歩ずつ
水面に近づいて
きらきらと輝く光に
向かうカマキリよ
あなたは
どうして
光に惑わされるの
針金虫の故郷は
今も無自覚の奥に潜み
記憶の故郷へ
導いてくれる
人間のはらわたにも
あてどなく渦巻く
針金虫は
あなたの故郷を知っている
ふるさともまた
あなたの針金虫
わたしは
初夏に溺れにゆく母を
何度も何度も見てきたよ
生きて帰ってこれたのは
海が迎えに来たからと
初夏に溺れる光のように
母は笑って言いました