「インドのことで僕が思い出すこと」中川ヒロシ
2025年09月16日
音楽や仕事や、色々やめた後だったので、新しく始めることを無理に好きになろうとして、僕はインドプーリーの海岸にいた。
インドも好きになろうとしていた。
サンセットを見るのに、わざわざ一人海岸に座っていると、インド人の父子が歩いて来た。
「おー日本人!この海岸で夕陽を見ながらバーベキューをしたくはないかい?」
と言う。
別にバーベキューは、したくなかったが、何とか帰って欲しくて、「バーベキューしても良いよ」と降参した。
するとインド人父子は、「じゃあ市場に魚と野菜を買いに行くから500円くれ」と言った。
え!今から行くの!?と思ったけど、もうこの頃には夕陽が沈み始めて夕焼けも見頃だったので、とにかく500円程度渡して帰ってもらった。
それからしばらく待っていたが、もちろんインド人は戻らず、辺りは真っ暗で、海岸は波の音だけがしていた。
「ああ、またインド人にやられたな」
と思ったその頃、真っ暗な闇の中に、インド人父子の白い目と歯が近づいて来た。
「おー日本人!魚を持って来たぞ」
二人は本当に魚と野菜、小規模なバーベキューの食材を買って来た。
砂浜に落ちている木切れを集めて火をつけてくれた。
もちろんこの二人は、お金だけ持って逃げても良かったわけだ。
インド人!たまに素晴らしい!
僕はインドの夜空を見上げてみた。
その日昼間、知ったばかりの、この地方の神様であるジャガンナートのことを思って。