「中嶋とオナラ」ヒラノ

2026年01月11日

「屁に返事すると死ぬらしいよ?」
そんな噂を聞いたことはありませんか?

17才の時だと思います、今ぐらいの季節で母親は晩飯を作ってくれています

「あ、オナラ…」思いのほか大きい音が出て「あっ!」っていう時にはお尻が1cmぐらい宙に浮いていたと思います

「ぷっ!」とか「ぶぅ!」とかじゃなくて「ぶわっ!」という「これ、大丈夫?」というビッグショットでした

そしたら母親が「へ?なに?」とフライパン返しを置いてわざわざコタツに入っている僕に返事を聞きに来ました

「屁だから!」「オナラだから!」「今のオナラだから!」言い訳する方もつらいのです
僕は夕食を待ちつつ悲しい気持ちになったのを今も覚えてます
当の母親と言えば「なんだ、オナラかぁ!」とケラケラ笑ってましたがこっちとしてはそれでころでは無い

「それ、屁だぜ?」

僕は中学と高校とお相撲さんが闊歩している両国という街で育ちました

JR両国駅の前に今もあるのかな?ゲームセンターがありました

まぁ、放課後そこにたむろしていたのですが中嶋と言う奴がいまして、いわゆるイジラれキャラでした

角刈りでポッチャリ、ほぼほぼ腹の肉をつままれているような人間で、何故か中嶋がそのゲームセンターに入ると琴稲妻(こといなずま)という髪が薄い力士が待っていて、「おう!中嶋!」そう言ってカップ一杯のメダルを渡し2人で仲睦まじくメダル落としを毎日していました

毎日よ?

琴稲妻関は僕らには一切話しかけません
中嶋オンリー、中嶋だけ
誰も現役の関取の前で中嶋にはちょっかいはかけられないのでした

中嶋、謎の魅力の持ち主だったのです

中学からパチンコ、競艇、競馬、(競輪はしていなかった)とにかくギャンブル三昧、平和島競艇では選手を見たいと双眼鏡を買うも対岸に座る友達のおじいちゃんを発見したり、何しろ存在その物が面白かったのです

中学2年生、修学旅行で秋田へと我々は向かいました

あっ!っという間に夕食を終わらせた僕と吉田は大食堂から決められた部屋に戻る最中、部屋の前で「あっ!俺、屁が出そう…」そう吉田に伝えると「ぶっお!」とオナラをしました

「くっせぇんだけど!」吉田は爆笑、そうして部屋に入りました
一部屋に6人、僕と吉田、それに中嶋とあと3人でした

吉田と僕はテレビをつけて「さーて、どうするかね?」なんて言っていたら残りの4人が3分ぐらい遅れて部屋に戻って来ました

「なんか事件とか事故とかあった?廊下、超くせぇんだけど?」
部屋に入るないなや廊下が臭いと僕と吉田にクレームをつけて来ました

それ、僕のオナラです

吉田は爆笑していましたが僕は自分のオナラが3分以上も足元、だからソックスを思いっきり持ち上げた辺りで3分以上も停滞していたという事実に驚きました

すっげぇ臭ぇの!もう40代過ぎてるけどあんな臭ぇオナラしたこと無いよ
あんな重たいオナラしたこと無いよ!
サッカーボールみたいに蹴っ飛ばせるんだよ?
オナラを、だよ?質量が違う
吉田なんて確認に廊下に出て2回吸ってるから

で、まぁ思春期です
お酒を持ち込んだりUNOにトランプに、とガチャガチャやるわけですが中嶋、こいつ22時辺りで気をつけの体制で深い眠りに入るのです

誰が持って来たのか覚えていませんが黒い太いマジックでまず中嶋のおでこに「肉」と書かれました

微動だにしない

ヒゲが書かれました中嶋は微動だにしない

中嶋はブレない
起きない、微動だにしない

「あ、俺、屁が出るかも!」

中嶋以外の僕は4人に自己申告しました

「イケイケ!」と4人に言われ僕は体操着を下ろしお尻を丸出しにして中嶋の鼻に肛門の照準を合わせ「ブっ!」ではなく「ボンっ!」という音を鳴らし中嶋の鼻腔めがけて屁をこきました

人生最大のビッグショットでした

さて、中嶋はどうなったのでしょうか?
どうなったと思いますか?

中嶋は歯ぎしりをしながら背泳ぎをする様に手足をバタつかせ始めました

ほんとよ?

「ぐぅっ!ぐぅっ!」って歯を食いしばりながら手足をバタつかせている

不謹慎だけどナチスのガス室ってこんな感じだったのか…
ほんとそれぐらい派手でセンセーショナルで笑いの先のそこに触れてしまいつつ僕らも僕らで僕の屁を嗅ぐ事に

「ずばぁ!くっせぇ!」
笑いは止まらないが中嶋の歯を食いしばる仕草も背泳ぎも止まらない
中嶋、これが海ならお前、沖まで出てるぞ?
最初は皆、中嶋なりの冗談だと思っていたのだが中嶋のそれは止まらない
歯を喰いしばってまだ手足をバタつかせている

あの日、中嶋はどんな夢を見ていたのだろうか?
あの日の中嶋を思い出すに意識不明と言われても人間には意識があるのではなかろうか?こちら側からアクセス出来ないだけであちら側は理解しているのではなかろうか?
意識不明と記憶を失うは似ている様で違うという事は経験で知っている
とにかく中嶋の反応は絵に描いた様な凄まじい何かへの嫌悪が感じ取れた
3分以上もホテルの共有スペースを占拠するようなオナラよ?
ルームメイトは僕のオナラを廊下で嗅いで事件を疑った
あの部屋は、僕らの指定された部屋は一発でガス室に化けた
それ以上に意識の無い中嶋の反応に皆で度肝を抜かれた
僕はクラスメイトをエコロジーな方法で抹殺してしまう直前だった

あの日以来、あんな凄いビックショットをかました事は無い

「ねぇねぇ?屁に返事すると死んじゃうらしいよ?」
この都市伝説に白黒つけるには中嶋へのヒアリングはマストだろう

あの日の中嶋は誰がどう見ても悪夢のど真ん中だった
おでこに「肉」と書かれミュージカルの
CATSの俳優の様にヒゲを描かれ、両手両足をバタつかせている
奥歯を噛み締めている

今の時代ならアプリで霊柩車を呼んでいたかもしれない
その前に119番か…

しっかし、皆と同じ食事を取っていたのにあれは何だったのだろう?何か特別な物を僕だけ摂取したわけじゃ無い

「ぷっ!」「ぷぅ〜!」
「お前、屁したろ?!」「くせぇんだよ!」

いや、ちゃんとテイスティングしてもらえましたか?あなたは音でオナラだと決めつけて固定概念の中での決まり文句を言っただけなのでは?
「ぷっ!」と「くせぇんだよ!」この2つはセットですよね?

ロシアが悪い、ウクライナかわいそう!ウクライナ頑張れ!
そうかな?それはどういう論拠で?

アメリカが悪い、ベネズエラかわいそう!ベネズエラ頑張れ!
どういう視点でそれを言うの?

その発想って50ccのスクーターのクラクションが聴こえたら「お前、屁してんなよ!」って道端で怒鳴り散らすのと変わらなく無いかね?

国際法が… そう言うなら中国にも言ってやらないと、かっこつけてみなよ自称リベラルの皆さん

「屁に返事すると死ぬらしいよ?」
覚悟しろ

これを書いている今は出先なのですが僕の回りを屁の臭いが漂っています
この2名の女性のどちらかでしょう…
見える物が全てでは無いし、聴こえる物が全てでは無い





ヒラノ