「北口の教祖」馬野ミキ

2026年02月17日

終電が過ぎて
シャッターの閉まった池袋北口のまえで
裸で
怒り狂ってる人がいた
一旦通り過ぎた後、引き返した
見守る一人の紳士曰く、終電に対するパニック発作であるらしいと
紳士と一分ほど、精神障害とは何かについて話した
二人の警官が対応している
教祖はなぜか服を着たがらない
警官は彼に服を着せようとする
教祖はすぐに服を脱ぐ
これらが繰り返され
コントみたいになっている
笑っちゃったけれど俺は自販機に水を買いに行って
教祖に渡すが
教祖は太陽みたいだから
すべてはねのけてしまう
お巡りさんが着せたズボンもすぐに脱ぐし
だけれどわざと抵抗しているという風ではなく
いやおうがなしに反応、反射している感じで
だから余計見ている俺もつらくなる
お巡りさんが教祖に服を着せる
教祖が服を脱ぐ
お巡りさんがズボンを履かせる
教祖がズボンを脱ぐ
誰も救われない行為が繰り返される
市民の良心として俺も仲裁に入る
ゆっくりいこう
一歩ずつ
苦しければズボンを履かなくていいんだ、教祖よ
きみは何も急がなくてもいい
だけれどお巡りさんたちはなぜかズボンを急いで敷かせようとする
急ぐからうまくいかないのに!なぜわからないのか?
社会人は締め切があるからわからないのだろう
そのうち救急車が来て
救急隊員が教祖に色々質問する
教祖はがんばって質問に答えたが時折答えを間違えた
なぜか?
質問と答えが同じ場所に内在していることを教祖は知っていたからだ
ぼくはとても情けない神をみた
赤子のような
生まれたての神について
救急隊員が「どこが痛いですか?」と問う
神は「すべて」だという
救急隊員たちは目と目を合わせ、神を担架に乗せた
警官は俺が買ってきたペットボトルの水を救急隊に託した
そしてぴーぽーぴーぽーといってみんなでどっかに消えたー






馬野ミキ