「タイムトラベルの失敗」馬野ミキ

2026年03月20日

故障したタイムマシンのなかでぼくはいま
一人ぼっちで朽ち果てていくところ
宇宙は広すぎて
どこにも不時着できない様

おおよそ
一番近いコンビニまで70億光年

おいら、銀河の端から銀河の端まで
この流線型でよく走った
BODYよ
猟犬のようについてきてくれたね
申し分ない

二元対立を交わして
闇の罠もや光の罠もやり過ごし
時には守るべき法も破ったさ
ぼくはきみを酷使しただろう
いまじゃ衛星の影で
煙をあげてしゅーしゅーいってるポンコツ

ぼくは四つん這いで船底をはう
蛾の幼虫のように
そうして最後の気力でマジカルなKeyをくいっと回転させ
船倉の扉を開く
そこにはこの世のアーティファクトが乱雑に
だけれど生き生きとキラキラと
夜な夜な秘密裡に光る苔のように
ほとんどこの世に誕生した時のまんまに
行儀よく詰め込まれている

誰にも自慢できない宝物たち
なぜなら人類はずっとむかしに滅んでしまったから

思い出すかつての地球のこと
いつか志を同じくしたハートを持った引力の同僚たち
笑う君のピースサインも実存も
もうここには何もない―







馬野ミキ






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