「🪳」ヒラノ
ゴキブリ
俺の家にゴキブリの餌などない引っ越してきてから5年、一匹すら見なかった
そしたら去年、小指の爪ほどのサイズの連中が現れた
どこからどうしてとかそういう話ではない
数が違う、総数が違う
初見で一言、「もうダメじゃん…」
ある日突然軍隊が我が家に派兵された
すごい数だし補給と繁殖を繰り返し続け兵数が増していくどれくらい増えたかと言うと夢にまで出るとにかくとんでもない数になった
殺虫剤?あんな物はただの毒ガスだ
連中が死ぬのだから人間に無害なわけはない
踏んづける、デコピンの二択で立ち向かう
踏む、内蔵がはみ出る一丁あがり
デコピン、これはどうよ?
デコピンって時速100キロを超えるそうだ
想像して欲しい
時速100キロで自分に向かってくるババアが漕ぐ電動自転車
それが真正面からブチ当たる事に
そりゃ吹っ飛ぶでしょ?
ゴキブリ、あいつらすごいのは吹っ飛ぶんだけど1秒もしないで涼しい顔して何も無かった様に振る舞う人間で言うなら顔よ?顔面よ?そこに時速100キロで電動自転車が突っ込んで来るのよ?どんな格闘家だって何も無かった様に振る舞う事は無理だろう
ある日、冷蔵庫の下に一大コロニーが作られていることを知った
見た瞬間「うわっ」「なんだこれ?」
鳥肌と悪寒、本当に震え上がった
急いで食器用洗剤をぶちまけた
3分もしないでそのコロニーは全て死に絶えた
奴らは人間の鼻にあたる器官が腹についているらしい
殺虫剤の毒ガスみたいなまわりくどい話ではなく界面活性剤がどうのこうので食器用洗剤は直接奴らの呼吸を止める
その恐竜がいる時代の化石には全長50cmを超える個体もあったという
50cmよ?あなたの肘から手首より大きいゴキブリよ?
もう悲鳴も出ないよ
これは大きい部類だが基本的には人間の手のひらサイズだったようだ
当時の地球は酸素濃度が今より高く結果として様々な生き物が巨大化していったと言われている
おそらくは大きい個体は食事量も確保出来ず交尾の相手も少なかったのだろう
が、しかしだそもそもゴキブリというのは最初から50cmもある生き物ではなくもっと小さな何者でもないような生き物であっただろう
それが豊富な栄養と高濃度の酸素によって巨大化、そしてサイズダウン、今に至る
人類が地上に現れる前から続く話だ
巨大化からのサイズダウン、これは進化なのか退化なのか?
どっちなのだろう?
レコードからカセットテープとなりCDとなりMDが生まれた
今はと言えばデータとしてMP3となりあらゆるデバイスにリズムが侵入している
今やカセットテーププレイヤーをUSBでパソコンに直結出来る物まで販売されている
なぜだ?なぜ戻った、歴史を逆再生した?
アップル社の新製品がガラケーです、なんて事はあり得ないだろう
扁平な体は狭い隙間に身を隠せるという利点がある
人類の生活空間にある隙間、そこが拠点となり、繁殖し繁栄を続ける、続けている、今も
この進んでは戻るという流れはなんなのだろうか?
おそらく音楽、文学、美術、造形物、これらは人間が人間である以上、ゴキブリの様に強靭な物であるだろう止まること無く増え続ける
これに伴う争いを今回は避ける
ゴキブリと人間、企業と地元住民とのやり取り、本件ではスルーする
が、しかし歴史を振り返る、退化とも言える現象をどの様に説明出来るのだろうか
俺はこの世に生を受け、今やおじさんだ
何をどうしたら俺は赤ちゃんでいられるのか?赤ちゃんに戻る事で得る評価そんなもの思いつかねぇよ、ねぇよ、あるわけねぇよ、然るべき施設に放り込まれるのがオチだ
だが、ゴキブリ先輩やらカセットテープの兄貴やら、この流れはなんなのだろうか
我々人類の祖先が猿であるなら、これから先の子供たちは尻尾がはえるのだろうか?これはそういう話だ
俺はその真相と解答に辿り着けていない
疑問を提供するまでである
一体どの様な力学が働くのだろうか?
それは個人発信で?あるいは社会制度、国家運営によって?
無いよね、でも実際あった事例を二つ挙げてみた
ゴキブリとウォークマン
あれ?詩も小説もそのままか
絵も彫刻もそうだ
人と人との愛も
様々な物が昔からそのままであるのも事実
そうしている間に
記憶も記録も価格も塗り替えられて行く
これは何だ?
次は何が戻るのだろうか?
