「犬について思ういくつかのこと」ヒラノ
あれは小学3年生ぐらいだったと思う
当時の潮流としてシェルティ、シェットランドシープドッグが流行っていた
シェルティ、ハスキー、レトリバー、ダックスフンド、チワワ、フレンチブルドッグ、トイプードルと流行り今に至ると記憶している
(ご存知かと思いますがスタンダードプードルは笑っちゃうぐらい大きいし、フレンチブルドッグはゲイが好んで飼育しています)
その時、その時代の犬種で流行りがある
わんこは工業製品では無い、「はい!今欲しい!」そう言って仔犬はやって来ない
しかしヴィトンの新作の様にペットショップに陳列される
誰がこの流行りのわんこのトレンドを操っているのか?という疑問が浮かんできませんか?
犬だよ?わんこだよ?雑種だろうがなんだろうが普通にみんな可愛いだろ
血統書ビジネスには誰も触れない
日本に自生している犬を手懐けて販売する訳では無い
誰かがブリーダーに親犬のセールスかけてるいるのは間違い無い
また政府の調査ではペットショップに陳列されるのにあたって運送中に3割の仔犬が死亡しているという話もある
人間って怖いな
俺は人間のおじさんじゃない限り毛深い連中が大好きだ
にゃんこもわんこも、あ、あと女の子も
実家では犬は飼えなかったけれども、それだけにコンビニ前に繋がれたわんこにちょっかいをかけたい、のだが…
気の弱い子もいて
「触らせて?」
「怖いよ!」
「誰なの?」
「わぁ、ごめん!ビックリしちゃったね?」
さわれ無いし、触ら無い
その子らはコンビニ前で孤独に耐えて小さい買い物でも短い時間をパパやママを待っている
一度、白い柴犬だったと思う
ローソンの前で繋がれており、あっちも尻尾ブンブンで、じゃあナデナデぐらいかは出来ると思った矢先、物凄い勢いでジャンプして来て屈んだ俺もあの子もお互い鼻先を強打、あの子はすぐに不貞腐れ尻尾を垂らし俺とは一切のコミュニケーションを閉じた、秒で、「プイっ!」
俺もけっこう痛かった
ま、そんなもんだ
彼らにも人格が有り、気分もある
チッチと言うチワワっぽい雑種のわんこがいた
この子は俺が小学校の通学途中にあるアパートの一階に住むおばあちゃんが飼っており、チッチはしばしば小学校に突入してはグラウンドを爆走していた
「わぁ!チッチだ!」クラスの女子が喜び手を叩く
今、考えるとえらいこっちゃ!ですが相手は小型犬で人の手を嫌い走るだけ走ったらアパートに帰って行くというルーティンなのでさして問題とはならなかった
いや、しかしチッチはなぜチッチという名前だったのか?どこで皆知ったのか?
チッチは完全に地域のアイドルであったのである
おばあちゃんの部屋から逃亡し、あるいは見て見ぬふりだったのか、いくつかの横断歩道を自力で渡り小学校のグラウンドを爆走し勝手に帰って行く
近所の志村けん、的な認識だったのだろうか?
さらに振り返って小学校2年生だっただろうか?例のシェルティだ
下校時、何かのタイミングで脱走したその子を小学生の4人組で追いかけ回した、そしてそこに俺もいた
そして隅に追いやられたその子は俺に噛み付いた
彼らの顎の力を考えたら肉ごと持っていけたのに俺の手は今もきちんと機能していて、
あちら、わんこ側からすれば「お願い!怖いからもうやめて!」という会話であってそこの力加減が子供だけに分からなかったのだ
俺は泣き叫んだ
ガブっ!というよりはカプ!だったんだけど
でも痛いのは痛いので「わぁ!」と騒ぎました、牙が刺さっていたので
あれであの子は手加減していたのである、わんこは優しい
そして、さらに振り返ると…
4歳の時だ
夏、幼稚園の運動会の後だと思う、日曜日、15時前には家族で帰宅していた
まだ陽がある、お散歩という近所のパトロールに出た
ちょこっと行くと3階建てのアパートがあり、2階にはベランダに出されている3頭のわんこがいていつもベランダから彼らも街を警戒していた
なぜかその日、ドアが開いていたのか「あれ?わんこいない…」と思った瞬間、その3頭はもの凄い勢いで俺の前に現れた
4歳ですよ?チワワにシーズーにあとなんか小さい雑種
4歳の膝ぐらいの大きさ
猛ダッシュで走って来た
「僕、食べられちゃう!」
運動会なんかより本気で走ったと思う、おへそ突き出して泣きながら本当に猛ダッシュ
背中には3頭の可愛い猛獣が俺を食べようと追い掛けて来る
金メダル?というぐらい全力で走って家に向かう
「うわ〜ん!助けて!」そう言ってギャン泣きで自宅のドアをドンドコ叩いたと思う
そうしたら親父が上半身は裸でステテコ一丁でドアをバーンっ!と開け物凄い声量で
「おい!ゴラーっ!」と叫んだ
その可愛い3頭はぴゅっ!と元いたお家へ猛ダッシュしていった
ご近所さんも何事かと窓から眺める事態に
その後、家で親父は「あんなちっちゃいのに…」と裸ステテコ&大声を恥じ、俺に嫌味を言い続けるのであった
4歳児にね
当時の家は野犬が出る土地でもあり親父は悪ワンが出たのかと腹決めて出て行ったら実際は3匹の可愛い御一行様だった
でもさ、お父さんさ、今でも思うけど不貞腐れ過ぎだったよ、しかも4歳児によ?
じゃあね、貴方が今の自分であって膝下ぐらいの猟犬が追い掛けて来たらどうしますか?それも猛ダッシュでよ?3頭も…
当時の俺は「お〜、よしよし!」とまとめて抱っこ出来るだけのコミュニケーションスキルが無かったのである
今?今ならみんな間もなくヒラノ軍だよ
その4歳当時の俺はトムとジェリーのジェリーみたいにおへそを突き出し猛ダッシュで逃げるしか無かった
彼ら3頭からすれば
「ヒャッホウ!」
「家から出れたぜ!」
「あれ?何あのちびっ子?」
「新しいお友達じゃね?」
「おい!みんな行くぞ!」
「うおぉー!」
まぁ、そうなりますわな…
いや、本当に怖かったんだから
お父さんさ、今だから言うけどさ、あれさ、怒り過ぎよ?
で、そんな4歳児の俺
セキヤさんという酒もプラモデルも生鮮食品も買えるなんでも屋さんが近所にあり、親にお使いを頼まれる様になった
セキヤさん、裏に鎖に繋がれたわんこがいたのだがこれがなかなかの悪ワンだったのだ
大きさはレトリバーぐらいだった(おそらく雑種)
お使い頼まれるでしょ?
「タバコ、セブンスター買ってきて」「はーい」
タッタッタッタッ!小走りにセキヤさんに向かう
そしたらセキヤさんの裏に悪ワンが待機していて俺のサンダルを持って行っちゃうの
ひどい時は両足だよ?4歳児が裸足でセブンスター握ってるの
で、セキヤさんに戻り「取られちゃった…」と言うとセキヤさんの息子さんだったのかな?彼が出て来て「お前またやったのか!」と悪ワンを叱り草藪の中に悪ワンのコレクションが貯まっており、そこから一番小さいサンダルを持って来てくれていた
今思うとその時の悪ワンのコレクション、すっげぇ量だったの
いやいや待てと、この地区って片足だけ裸足で家に帰る人ってどれだけいたの?本当よ?段ボール箱からはみ出る量で山になってたから
それらを草むらに隠しているのを覚えてるよ、片足だけの赤いパンプスまであったからね
ゲームセンターで待ち構えるヤンキーより質が悪いコレクターだった
わんこ、社交性が高い可愛かったり勇敢だったり、なにしろ毛深くて素敵な連中だ
俺は裸の女性より仔犬を抱きたい
これはどういう感情なんだ?
カワイイ?原宿?女?渋谷?キャバクラ?いや、そうじゃなくて…
なんでだ?なぜだ?犬を見た所で性的興奮なんて一切無い
ただただ、可愛い
いや、これ何?男も女も人間は犬の魅力に取り憑かれる
なんじゃこれ?
なんで犬って可愛いのでしょう?
人間?人間なら性欲がどうたらこうたらで説明つくんだけど…
犬の魅力ってなんだろう?
なぜ人間は犬に惹かれるのだろう?
お話も出来ないのにどうしてコミュニケーションが出来るのだろう?これって科学的に証明されているのだろうか?
先輩がパグを飼うにあたり『犬の飼い方』という本を買った
「猫の髭を切ると方向感覚が狂う」とある
じゃあ犬の髭は?
「特に意味は無い」と記されていた
大爆笑
犬って、犬って、なんであんなに可愛いんだろう?
冷静に考えて欲しいんですけど犬を見て勃起する男いる?犬を見て股間を濡らす女性っている?
でもね?性別関係無しにアイドルよりAV女優よりも可愛いし美しいし、そしてバカなの
なんだよそれ?
これって何?これってどういう、どこから湧く感情なの?そのくせバカなのに気難しい
でも、我々人間はメロメロになる
あの子達ってマジでなんなの?
詩でそれを解き明かせるのか?
あれだけ社交的なくせにミステリアスなのである
不思議ですよね、なんで可愛いいの?
狼を人間が囲って3代続いたら普通のわんこになると言う、人間と仲良しになってしまうらしい
属、一族、家族、存続
国家の最小単位が家族であるならば間違い無く彼らは家族であって、ど真ん中のアイドルである
ねぇ犬?なんでそんなに可愛いの?
「へっ!へっ!へっ!へっ!」そう言って時にモゴモゴ、ウニョウニョ、クンクン言って何か話しかけてくる、真っ黒いクリクリの目で
わんことお話が出来たらいいのにな…
「腹へった」
「おやつくれ」
「撫でろ」
「眠たい、寝る」
これだけなのかな?これだけっぽい気もするんだけどさ…
それでも良いんだけどさ…
犬、犬の口は詩人の口より雄弁に、そして忙しく動く