「油塗れの整備工」西村太一
2026年04月17日
以前仕事をしないかと声をかけて拾ってくれたおじいちゃんが、君は車の整備工なんかに向いていると思うよ、なんて仕事の出来ない僕に言っていた。無論その道の険しさはぼんやり解るから、頭の中では確かにその職種の学校へ行きたいと思っていたけれど、残念ながらその道の希望は無い。車がマニュアル車からオートマに直ぐに移行して、その後はどんどん車が進化した。自宅から見える辺りに車検の会社があって、飛躍的に仕組みが進化した車関係の仕事人が居らっしゃる。確かに僕は昔そんな夢を見るような人間だったけれど、もののあはれのように無職で不撓不屈とは縁の無い生活で露命を繋いでいる。よくここの辺では、車検の会社の人を見かけるけれど、車に関係の無い僕は住む世界が違うので、へえ〜、仕事の方だと思うばかりだ。恐らくかなり勉強をしたか、経験値のある人しかそんな難しい仕事はムリなんじゃないかな。ちょっと変な話し、油塗れの整備工という言葉が時々脳裡に浮かんでひっかかるようだ。今日は仕事場のシャッターが開いているな、とか何やら惨たらしい妄想が出てしまうな、とか考えてしまう時もある。どんな時も明朗に接客するのも作業するのも、労働は伊達や酔狂では遣り果せないと熟思う。精々自宅にて、妄想か何かの責め苦に喘ぐような感じだ。
