「なぜあたしは歌うのか」中村アリー
「なぜあたしは歌うのか」
前書き
ミキさんからアリーさん寄稿してくれませんか?とお話をもらった時
覚えててくれたんだってゆう喜びの感情を瞬時に追い越し
まじか、まじですか、と思った
心臓が少しヒヤッとした、後ろめたいことなど何も無いんだけれど
まじか、まじですか、と思った
お前、まさか、、無い訳じゃないだろうな、、って言われてるような気がした
いわゆる音楽の神様に言われてるような気がした。なぜかジョンレノンが頭に浮かんだ。
だけどあたしは信仰してる宗教もなければ神様に会ったこともないしジョンレノンは詳しくない。
ついに向き合う時が来たのかと思った。
向き合いきれるだろうか、
このテーマに、ましてや日本語がおかしいと定評のあるあたしに
加えて更に誤字脱字女王のあたしに。
でも連絡を頂いたあの日から毎日考えてみた。
そして沢山の『なんで歌ってるんだろう』の場面を思い出した。
これがなんの類の文章かはわからないけど一度全部出し切ってみようと思った。
なぜあたしは歌うのか
お客さんが誰も居ないライブハウス
開演を過ぎても共演者さえいないフロア
次いつやる?座った瞬間に聞かれた清算
水光熱がもう止まりそうな家
気がついたら差し押さえられてた預金通帳
ガールズイベントに出ても良いのは何歳までですか
次のリハーサルまでに売れそうな曲作れなかったらバンド解散と言い放たれた夜
流れてきたSNS の投稿でバンドの解散を突き付けられ夜空に放り投げたアイフォーン
メンバー同士が不倫しているのを知らないふりしたスタジオ
ギターで出来た豆よりアルバイトで出来た切り傷の方が多い手
ステージからお客さんが泣いてるのを見たスポットライトの逆光
ありがとうで抱きしめたい体だけじゃなくて心も
また来るねって言ってもう来なくなった人を見かけた交差点の向こう
湿ってく夜中のギターの音を遮った隣人の壁を叩く音
もっと練習したほうがいいとホームレスに言われた真冬の路上
バンドが向いてないんじゃなくてあたしが人間に向いてないだけねって笑ってみた
朝が来るまで泣きながら歩き続けた環状八号線
このラーメン全部食べたら次に進むんだだから全部のせで
初めて一人でステージに立った日に震えてた足
誰かを救いたいなんて厚かましすぎる
生きていたいと歌いながら死にたがってること気付いたので帰ります
ありちゃんは今日も歌ってました幼稚園の先生は母に報告してたけど興味なさそう
うるさいばかやろう二度と来んなと怒鳴りたかったのに落ちた目線はコンクリート
エフェクターケースもギターもカバンも全部道路に放り投げて逃げた帰り道のわかる道
消えてしまいたくて走った後に潜り込んだ自分の匂いのするベットの中
お客さんに歌ってくれてありがとうと言われた時の生きた心地
歌ってみたよって届いたあたしの歌のカヴァーで始まった朝
あなたがこの世に居なくなったと聞いたライブハウスに向かう途中
愛してたのに歌にもならなかった愛してたのに
ギブソンのSG
ヤイリのアコースティックギター
ありちゃんが買わないならオーストリア人に売るところだったよ
この世でたった一つのあたしの声
この世でたった一人のあなた
今聞いてくれてる人の人生にあたしいるんだね!
共演者の人と一言も交わさず帰った荷物の重みでこのまま背が縮みそう
それ、お金になるんですか?って言われた無垢な目
あたしを庇ってくれた人の間に漂い残った情けなさ
また歌いにきてね待ってるからねって本当の声色で言ってくれたライブハウス
あなたに会いにきましたと心から言えた場所
悔しくて
悔しくて悔しくて自分の太腿殴り続けたお風呂場
ギターから死んだ弦の音がする
あたし今日ねとてもいいライブしたんだよ
本当だよ、世界で一番いいライブだったよ
本当なんよ、あーあ見て欲しかったな
なんでこんなぐちゃぐちゃな顔して歌ってるの
自分のこと好きだって心から言ってみたいからよ
そんなことより曲作れ
この度あたしCD をリリースすることにいたしました!
たくさんの人が周りにいてくれることにやっと気づいたCD ショップ
だって嬉しそうに笑ってくれたんだもん
信じるしかないじゃないか
信じるしかないじゃないか
あたしのこと見つけてくれてありがとう
誰にも聞かせられない歌
誰かに聞いてほしい歌
なんであたし生きてるんだろう
なんでこんな風にしか生きていけないんだろう
違う
選んでここにいる
嬉しい時悲しい時寂しい時どんな時もあなたの側にいたいと思った
音楽で、あたしの音楽で。
後書き
なぜ歌うのかと聞かれた時に間髪いれず好きだからだよ、って言ってきました。
今までは。ぬけぬけと。もちろん嘘じゃないし大好きです。歌うこと。
今回もその一言で颯爽と立ち去ろうと思ったけど
好きだから、、だけじゃ今のあたしはあたしを納得させることができない事に気付きました。
もちろん嘘じゃないし大好き。歌うこと。
でも好きだからだよ、で立ち去れるだけの言葉に風力が足りない。
こんな大きなテーマを格好良くまとめあげられるだけの説得力もない。
ならば丸裸になってみようと思いました。おかげで風邪をひきそうです。
夢を追う人が活動していくその中で
どれほど報われない日々があっても日常の中なんとか擦り合わせ疲弊していっても
同い年の友達と段々会話が噛み合わなくなってきても
諦めそうになっても諦めきれなくて苦しくてもがいていてもそれでも立ち上がる時、
希望を見出すときはいつもヒト匙の何かなんだと思います。
抱きしめているつもりでも抱きしめられているのはこちらの方
そんな気持ちになることがあります。
こんな機会をいただいたことを光栄に思いとても感謝してます。
あたしのこと知ってる人、初めて知った人、これから出会う人、これを読んでくれたあなたに、ありがとう
何より歌を聴いてくれるあなたに、ありがとう
中村アリー