「アリの話」06 大塚ヒロユキ
アリは以前、軍隊に所属していた。
陸軍だったアリは海軍に憧れていた。海を旅してきた者たちの話をいつも真剣に聞いていた。アリはいつか除隊して、世界を旅して回ることを夢見ていた。
アリは軍隊に馴染めなかった。集団生活はそれなりにこなす事はできた。仲間たちとの共同作業も率先して行った。老衰したトノサマバッタを運ぶ任務の指揮官を任されたこともあった。だが時折、無謀な戦闘も行われていた。長期に渡る終わりの見えない戦い。スズメバチの巣を襲い、何百匹もの繭を略奪する作戦には二度と加わりたくなかった。
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