(承前)1 日本での欧米の音楽の受容(3)
表層的なスタイルとしての「フォーク・ソング」だからといって、けして貶められて良いものではない。浜口作品にしても、森山作品にしても、まだ試行錯誤の時期であった「日本のフォーク・ソング」にとっては、必要な過程であった。
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過去の記事
「バニーカクタス」 馬野ミキ
離婚後、23区の外れの木造アパートで
つつましく孤独に暮らしていた
隣駅の100円ショップのレジ前でその子をみつけた
バニーカクタス
兎の耳のようなかたちをしたサボテン
家に持って帰ってこたつテーブルに置くと
バニーカクタスは喋り出した
会話が続いた
ぼくは幸せだった
次の日、もっとサボテンやら多肉植物やらを買いに行った
そうするとその子、もう喋らなくなってしまった
あんなにおしゃべりだったのに
ひと言も
最初から私は喋ったりするものではないのです、という顔をしてすましていた
なぜぼくは、たった一つの大事なものを
もっと増やそうと思ってしまったのだろうか。
「いかなる場合でも」 西村太一
例えば僕が声が発っせなくなっても
デリケートな問題がなくなっても
生きる屍になっても
今川焼に白餡しか無くなっても
山の川でお饅頭を食べながら黄昏ていても
無性に桃が食べたくなった時に売り切れでも
恋愛でゾッコンになって幾ら切なくなっても
サーキュレーターが壊れても
もよおしてトイレへ驀地で間に合わなくても
大雪山に置き去りにされても
育てているシクラメンに虫えいができても
心に決めた人に対して他人へ浮気はしません。
俺に求愛されたら逃げ惑うだろうな
こらこら また逃げている
大西美千代は個人誌『そして。それから』という個人誌を長く発行していて、通常の行分け詩に加えて写真詩という独自のスタイルを追求している。私も長年拝読してきた。個人誌だから個人的な生活も垣間見えることがある。家族にまつわる(要らぬ)苦労は、家族拒否症の私には受容しがたいところもあった。四国遍路旅の記録からは、決断も断念も素早い人だとわかった。執着心が薄いところは私と共通する部分もあるようだ。
2021年の前詩集『動物詩集...
前回、アメリカでのフォーク・ソングのブームを受けて、日本でもそれを受容する形でフォーク・ソングという言葉が使われるようになったという話を書いた。それに関連する話をもう少し詳しく書いておきたい。
「伊藤野枝の子どもたち」奥主榮
一
伊藤野枝が、親から決められた結婚相手との関係から脱走したという話題は、野枝の奔放さを語る際に蒸し返される話題である。しかし、九州から東京への鉄路の旅路は、協力者なしに成立しえないものであった。野枝が残した文章を読む限り、そのための用意は周到なものであった。彼女は極めて理知的な思考の持ち主であった。そうして、おそらく女性であるというだけで見下すことが当然であった時代に、その知性は彼女を憎悪の対象へと追いやった。最終的には「常識」と名づけられた理不尽な因習に囚われずに振る舞う彼女と大杉榮は、その天衣無縫さゆえに兇刃に倒れることとなった。(命令を下した憲兵隊の甘粕大尉に対する形の軽さに関しては、真犯人が別にいたからという説もある。これに関しては、近代史のタブーの一つという噂もある。)
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「密売 」ヒラノ
密売は蜜売、蜜の味は金の味
俺の名前は横山隆、ヨコヤマタカシ
「タカC」の名前で地下メンズアイドルグループの「TONE de PONG!」
(飛んでポン!)のメンバーだ
アイドルとはいえ状況は厳しく地下は地下なのである
動員数云々の前に少ないキャパの箱しか用意されず(客との距離感が重要との理由で)ライブのその日の客とのチェキでの2ショットで食いつないでいた
1枚2千円、そのうち俺の取り分は20%
1枚知らない女と写真を撮って400円のバック、これが救いだった
CDが何枚売れたか?知らないよ
…
「横山さん!横山さん?」
しつこいな、怖いから聞けないんだよ!
謎のプロダクション
これって俺がしたかった、なりたかたった姿なのかな?
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「少年は詩人に堕ちて」芦田晋作
「たはむれに手相を観る夜ひとの闇見るためのわが若き日の闇」
好きなバンドのライブを観るために遠い街へと出かける、いわゆる「遠征」をする。時どき、いや頻繁にする。2023年の7月に広島に行ったのが皮切りなのでちょうど一年が経った。広島に始まり東京、岡山、名古屋、年末にもう一度東京、千葉、また東京、そして先週末は金沢へ行った。稼業を休み家を空け交通費と宿泊費を払ってまで観たいライブがあるのでしょうがない。人生いつ終わるかわからないもの。そのために働いているし。
「△」湯原昌泰
山に入るようになったのは
今年で40歳になったこともあり
自然とは何か、不自然とは何かと知りたくなったからだが
その山の中にあって
僕の存在はあまりにも不自然であり
木々はあまりに自然であり
風のそよぐ風景の中に溶け込めない僕は
滝のような汗を垂らし
この汗の中にこそ不浄はあるのだ
この小便の中にこそ穢れはあるのだと
ただならぬ面持ちで喘いでいるが
ふと
では熊は自然なのか
スズメバチは自然なのか
鹿は
猪はと考えると
どれもこれも尋常ではない。
すべて生き物は異様である。
ではさて
人間にとって服を着るということ
風呂に入るということ
電車に乗るということは
どれも自然な行為だろう。
つまり
視点が変わればすべては自然であるということだが
以前新宿三丁目駅の大トイレに入った時
どうやら前に入った人が
そこでカレーを食ったらしく
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「選挙速報のあと」 馬野ミキ
毎日たくさんの子ども世界からいなくなる
それはどの党に票を投じても変わらないだろう
古い権力から新しい権力に変わって
いじめのターゲットが新しく更新され
私たちはお祭の気分でよーよーを夜空になげ
いっとき悪いことをしていない感じになれる
ぼくは
お父さんみたいに思えるリーダーがほしかった
でもそんな人いないだろうな
ほんとうにこれでまじにやばいというときに
当り前のようにこんなものはまじにやばくないと笑って
肩車をして
それからスローモーションで地上におろして
めでみえる口と口でおしえてほしかった
暴力ではなく
言語で
そんな人はいないだろう
ぽくはお母さんみたいにみたいに思えるリーダーがほしかった
ぼくとぼくの友だちの全員を守ってくれる人だ
ぼくとぼくの友だちを分けへだてる人ではなく
大人たちを尊敬したかった
父母に見習いたかった...
改めて説明しておけば、T-theaterは、僕が1996年から2007年にかけて主催していた、「詩の朗読をメインとした舞台集団」である。四半世紀以上昔の話であり、周囲にはその頃にはまだ生まれていなかった方もおおくなってきた。時代は変わっていくのである。
連載 第1回
はじめに
僕は、1959年(昭和34年)生まれである。余り、芸能関係のことには興味を持たずに育ってきた。中学に入った頃(1971年)、偶然見たテレビ番組がきっかけとなり、流行歌と呼ばれる音楽に興味を持つようになる。当時、「フォーク・ブーム」と呼ばれるような時代で、既成の流行歌に対して、自分で作詞作曲した歌を奏でる歌手が次々にデビューしていく時代であった。
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「あわや大惨事」西村太一
頭やお腹が痛い人って多いようだ。朝っぱらから塞ぎ混んでいるよう。どうしたら治るのでしょうね。毎朝毎朝皆さん大変そうです。果物を食べる習慣でもあれば良いのでしょうかねぇ。林檎を皮と芯を取って。僕は取り敢えず甘~いペットボトルのコーヒーを飲みますけど。お金のあるかたは、それで済むのでしょうけど、僕はお金が無いときは、ガムシロップを水に溶かして飲んでます。でももっとシビアなかたは?髄膜や腹膜がとっくに欠損されているかたは?ウィンナーの皮って膜を甦らせる効果がある気がするのは気のせい?僕も他人事ではありません。そんな苦痛耐えられません。今の所そうにはなってないけど。死ぬ気で会社へ向かうのでしょうか。そう言えば今日の御昼は卵かけご飯だ。もうそろそろ都会は賑わっていそう。
「童貞先生」ヒラノ
「皆さんとは短いおつきあいになるとは思いますが、どうか清き一票をお願い致します!」
政治家ってバカでもできるんだなぁ…
部屋で横になってテレビを観ていた
鼻糞も乾いていた
「あっ!俺も出馬しよ!」
急いで準備にかかった
iPhoneでほぼ適当な画像加工でポスターを発注し、なんかわからないけど携帯ストラップも作った
借金?した…
政権公約?マニフェスト?
あるぜ!あるのよ、バズーカ砲みたいのが
「フリーセックス!」
恐ろしい勢いで童貞有権者が集まってきた
何万人じゃない、何十万人だ
Xもフェイスブックもティックトックも7日でフォロワーが100万人を突破した
来た!
詰め襟の学生服のファンが集まり俺の周りの何もかも童貞で埋め尽くされた、トップ当選確実だが絶対にテレビでの報道は無かった
でも、来てるからw
...
「みどりさん」 あいこん
ディスコ・ソウルの曲をかけてくれるというレコードバーに連れていってもらった
「さようなら」yellow
最後の生理は4日で終わった。
これからわたしの体に起きるのは
どんな事だろう?
私は痛みを取り除くのと引き換えに
女である事を辞めた、
気がした。
もう私から流れるものは
命を守る為のお布団の残骸、
ではなく
ただの血液である。
女であることは
痛みと共に生きていく事なのだと
失った瞬間に悟った。
もう遅い。
もう、遅い。
病院から帰る途中
日傘も差さず
途方に暮れた。
これからは
女、でもなく
ただの人間、だ。
男、でもなく
女、でもなくね
ただの胸と、膣
があるだけの
す人間。
女の、生臭い
ドロドロした部分を取り除いたら
一体なんなのだろう?
何をしていこう?
「山頂で」 中川ヒロシ
標高3000M
標高3千でも聴こえるラジオ
ラジオ人生相談
転職 浮気 借金苦
それら下界の生暖かな不安に
まるで耳を貸さず
稜線を渡る風の 乾いた冷たさ
山頂から見る
その景色の捨て方は あまりに見事で
どちらを向いて見ても
どちらかがもったいない
いっそ目を閉じ そこを山頂とする
そして ついに人の登ることがない
残りの高さを思う
人が生きることの
驚くほどの安さとその喜びを
少しずつ取り戻しながら
「パッケージ」ヒラノ
一昔前であれば夜職、キャバクラ嬢だとかそれに付随する職業というのは白い目で見られがちだった
今はどうだろう?
ツイッターで、インスタグラムでフェイスブックで、ドレス姿でシャンパンの空き瓶を自慢したかと思えば、最新のヴィトンやディオールで固めた私服を披露しキラキラの人生を多くのフォロワーに見せつけている
アイドル気取りだ
そんな時代が来るだなんて5年前では想像つかなかったであろう
自称インフルエンサー、いやあなたはキャバ嬢ですよね?
SNSにより際限無く肥大する自己顕示欲
援助交際、パパ活
待って、それって結局は売春ですよね?
パパ活なんて関係無い丸の内のOLだってパパ活と言えば話が通じる
なぜ?
アダルトビデオに出演
人生の汚点
セクシー女優と名乗ると地上波の電波に顔が出せる
芸能人気取りだ
...
「数」 河野宏子
弱りきった小鳥が
ほとんど落ちるようにやってきたので
手のひらに載せて看取った