「作文」POGE

2022年02月01日

小学生の頃、作文で
あなたの好きなものを
書けと言われた
なにを書いたか全く憶えていない
一人ひとり作文を声に出して読むことになったが
退屈で頭になにも入ってこなかった
(みんな下手くそだな)

が、一人の女性の作文だけは耳に入ってきた
というよりも今でも内容を憶えているくらい

記憶に深く刻まれている

「わたしのすきなものはおばあちゃんです。」
たどたどしい喋り方だったが
本当におばあちゃんが好きだということが伝わってきた
彼女はあまり裕福ではなく
畑仕事でも手伝っているのか
真っ黒に日に焼けた肌をしていた
「おばあちゃんはやさしくて、わたしをたいせつにしてくれます。」

その声が本当に嬉しそうで愛おしそうで、羨ましくなった
そして自分の書いたものがいかにくだらないものか
思い知らされた

私は貧乏ではなかったが家庭不和で家族のことなど気にもしていなかった
彼女は貧しかったかもしれないが深い愛情に包まれて育ったのだ

思わず泣きそうになった

泣いてしまえばよかった

なんの力もない子供にとって
いちばん大切なものは愛情だ
彼女は成績は良くなかった
私はテストの点数だけは良かった
そんなものはどうでもいいのだ
幸せの基準は相対的なものではない
絶対的、幸せ
誰とも比べられない幸せ

彼女にあって私にないもの
私は情けなかった

彼女は今なにをしているだろうか
多分、あの頃と同じく愛の溢れた家庭を築いているだろう
不幸が連鎖するように、幸福も連鎖するだろう

頭の良さにあぐらをかいて
人を見下し家族を憎み
そんな子供時代はゴミ溜めで暮らしているのと変わらない

彼女が詩を書いたら
ふと思う





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