「抒情詩の惑星第一期必読」泉由良

2022年08月31日


 馬野さんから、抒情詩の惑星のなかでお薦めの記事を挙げて欲しいと連絡をいただいてから、随分とのらりくらりとしてしまった。云い訳なのだがサイトが更新される都度読んでいたわけではなかったので、大体の記事の揃いの輪郭は摑まなければと思っていたし、お薦め記事を書いたあとでもっとお薦めなものが登場していたら困るからだ。それから、他のお薦めを紹介しているひとの記事も読み直した。

  私が、抒情詩の惑星で必読だと感じ入っているのは一名のみ、平居謙先生の シリーズ短小突貫へンタイ式連載「現代詩とは何かー答える」である。
 平居先生のことは合評会で先生としていらっしゃるからであって、また教員としてのお仕事もなさっているからだが、この部分に於いて忖度しているわけではない。ただ、呼びやすいから、先生と付けている。
 この連載は素晴らしい。あと三十回分ぐらい更新されて欲しい。最早ウェブ記事というより、大学生が現代詩の講座をとったときの毎回のレジュメ以上の価値がある。実際私は、ルーズリーフに印刷して、蛍光ペンを引きながら読み返した。実は何人かの記事を印刷したが、そのようにして向き合うべきテキストは、平居先生の文のみだった。私は授業料を払うべきだ。

>>それでもやっぱり詩の言葉は詩の言葉。日常の言葉とはスピード、性質、顔つき、歴史、喜び方、滲む様子、破壊力、生々しさ、体重、ガッツ、イク声、温度、面積、とんがり具合がみんな違っている。すべてが日常とは違っている。

(抜き書きは、連載②より)


>>というのも、詩を書くことは詩人の「息」だからだ。雨が降っているとか、身体がだるいとか、昨日食べ過ぎて胃が重いとか、いろんな理由があっても息を止めるわけではない。うまい息だとか、へたくそな息だとか、そんなものはない。なぜならそれが息というものだからだ。ただ呼吸をするように、詩は知らないうちに身体からこぼれ出ている。それに気づかないだけだ。 

>>「息」というのが極端な言い方だとすれば、「仕事」に置き換えてみてもいい。仕事を続けてゆく中では、楽しい時もしんどい時もいろいろある。当たり前のことのように仕事に行ったりする。詩を書くこともそれと同じだ。詩を書く人のことを詩人という。もし、好きな時にだけ詩を書いて、思いつた時にだけどこかに発表するとするなら、それは詩を書くオンナノコや少年ではあっても詩人ではない。詩人は年がら年じゆう、詩のことを考え続けている。当たり前だ。仕事だからだ。息だからだ。

(抜き書きは、連載⑥より)


 軽々しく詩人を名乗るか名乗らないのか問う場合、丁寧に詩人を名乗れば良いではないか、と私は思う。丁重に物事に相対出来ないひとはライヴハウスを出て、カラヲケか何かに行った方がましだ。或は喫煙所へ。或は二郎系へ。またはSNSへ。 

 何故なら、詩は、愛だからです。光と云っても良いし自分にとって自分だけの神様を持つことだと思っても良い。若しくは、詩はあなたの同居人です。なんとなくあなたと一緒に棲んでいるって世間では云うらしいんだよね、と家のひとに云えるだろうか。
「詩人とは名乗りがたいのですが、そういう風なことをやっています」の方が名乗りやすいだろうことは分かる。分かるが、それは、「愛についての考えはないけれどセックスしている」ひとだと云うことだ。
 まあそういう風に生きて児までつくるひとの多い世の中ではある。



 神様という単語が、ご時世的に面倒なことになった。或は、宗教という語が。
 平居先生の真骨頂は下記ではないだろうか。

>>1
>>詩は個人的な宗教である。神を見失った中心線の存在しない書き手には、詩を書く事はできない。
>>2
>>詩はそもそも神について語るためにあった。現在書かれている詩は、それをぬるま湯に溶かし薄めて、分かり易い末の形で、楽しい雰囲気を醸し出させ地上に誰かが落としたのだ。
(中略)
>>8
>>詩と宗教は似ている。似ているところは多いけれどもやっぱりどこか違っている。他の人がだあれも信奉することのないちいさなかみさまを密かに信じても誰も文句を言わない自由があるという一点がやっぱりいちばん、違っている。


(引用は連載⑨より) 

  そもそも心のなかで何かを祈って(または想って)詩を作るのではないかと思う。それは「愛して」にも似ている。

  ざくざく書いてきたが、つまり、シリーズ 短小突貫へンタイ式連載 「現代詩とは何かー答える」のすべての頁から滋味があり、面白い。多くのひとが気になるだろう中原中也賞や自費出版、G代詩手帖にも触れてあるが、むしろ血肉になるのは、詩とは何か、についての精細な著述だ。これを書けるひとがここにいて良かった。

 こういうご紹介記事を書くときは、必ず自分の文章も紹介も付け足すようにしているのですが、わたくし泉由良個人の詩としては、初めて自分が家族というものをどれほど嫌いか触れた、下記の詩などを書く機会をいただけて良かったです。抒情詩の惑星立ち上がり当初は、家族についてというテーマがあったので向き合いました。

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シリーズ 短小突貫へンタイ式連載 「現代詩とは何かー答える」 




泉由良