「絶頂と山頂」蛇口
ご注文が集中しています
一緒にツラい恋愛を乗り越えてきた彼女は付属しておりません
そうか
そうだよね
今日も飲みすぎよう
飲み屋の君は、今日、千度目の
追加ドリンクオーダーいただきました
を言う
トレイで運ぶグラスのドリンクたちを少しずつこぼす
つんのめって、何を拾う?
至上の時ならいいのにね
今日も飲み屋のテレビは
バレーボール女子日本代表
吉沢選手は相手からのサーブを待つ間
よく鼻を手でこすっていて
それにバリエーションがあって可愛い
杉山選手は常に焦点の合わない目をしているが
ブロックが決まったときに誰よりも大口を開けて喜び可愛い
常に冷静沈着な高橋選手は
相手のマッチポイントでも淡々とスパイクを決め
逆転したときに屈託のない笑顔だった
可愛い
そして大友選手
サーブを打つ前に常に神経質に床にボールをバウンドさせる
高橋選手がそのまま打つのとは対照的に自分の間が取れずに迷い
案の定、勝負どころでサーブをミス
これで相手にチャンスを与えてしまい
その後またキューバが凄いサーブを決めていた
せつない顔した大友選手はほんと
可愛い
今日もちゃんと飲みすぎた
朝の新宿ゴールデン街を抜けると
何かを食い入るように眺めている若い男がいる
ストリップ小屋で踊る女の子たちの写真を見ている
女の子たちは満開で
その過剰さに何か切なくなり抱きしめたくなる
俺も抱きしめられたい
立ちションしているおっさん
立ちションМCバトルなら最強の俺がいる
単に今日も飲みすぎただけ
新宿三越のビルのCOACHのロゴを手でなでなでする
COACHの文字は立体になっていて
いつでもひんやりとさわり心地がいい
コーチよ、見捨てないでほしい
いつか俺が至上のものを手に入れられたら
あんたにシャンパンを振りかけるから
もうすぐ駅だな
みなしばしのお別れだ
あれ携帯どうした?
財布どうした?
俺、どうした?
電車の中で向かいの席の永遠の2年目のジンクスが
今日が人生最後の日だと思って生きなさいという
タイトルの本を読んでいる
今日が人生最後の日だと思って生きなさいを
人生最後の日に読みたくはない
俺は空のペットボトルを横にして
足元でくるくると回して
止まったペットボトルの先端で
その日のピンナップガールを決めた
ペットボトルの先端の
これまでもこれからも話をすることはないだろう
21世紀枠の少女は至上の愛にあふれている